第32話 片付け

 レジ前では魄(たま)、ブックスタンドの前は皓(しろ)と、危険な雰囲気が張り詰める。


 モメ始めたトイレの涅(くろ)と狂犬のような顔をしたお兄ちゃんとは、どうやら片付いたようだが·······


 トイレから出てきた涅(くろ)ののんびりした声に、皓(しろ)は頬を緩めた。


 「バカが多くて困っちゃうよ。トイレに行ったヤツは、もう片付けちゃたの?」


 「ああ、ホッ特つもりだったけど、手を出してきたからね」 


 唇から滴る血色を、手の甲で拭いながら爽やかに笑う。


 「あれ、レジの魄(たま)の方でも始まっちゃったみたいだね」


 「涅(くろ)、もうしようがないから、みんな片付けちゃおうよ。どうせすぐ終わるから。涅(くろ)は外にあるバイク片付けといて。他の客の邪魔になるから」


 「オーケー、わかった。じゃあオレはバイク担当だね。あとは皓(しろ)と、魄(たま)に任せるから、よろしくね」


 「ハイハイ、よろしくね」


 皓(しろ)の声を背中に聞きながら、自動ドアを開かぬまま、涅(くろ)は店の外へ。

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