第34話 消えた10人

 ほんの5分ほど前までは、ヤンチャなお兄さんたち10人が好き放題していた店内が、今は涅(くろ)と魄(たま)と皓(しろ)の『3人だけ』しかいないようだ。


 賑やかだった店内が、静まり返っている。あのヤンチャな若者たちはどこへ行ってしまったのだろう。


 床を汚している赤黒い液体が、まだ温かいのか生臭く香る。魄(たま)はユニフォームの黒のポロシャツを、丸く突き上げている胸のあたりを気にしているようだ。


 「ちょっと体液が飛び散っちゃったけど、黒だから分かんないよね」


 「大丈夫よ、こんなこともあるから、黒にしといて良かったでしよ」


 ちょっと得意気に微笑む皓(しろ)の笑顔がまるで女神のように眩しい。


 「体液の始末は、二人でやってよ。ヤッたのは二人なんだからね」


 「もう、涅(くろ)ったら冷たいんだから。そんなことじゃ絶対に女の子にモテないよ」


 「魄(たま)ったら、何を言ってんだよ。技を使えば一発で片付けられるじゃないか。それにオレは女の子にモテなくても全然構わないから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る