第29話 皓(しろ)と魄(たま)

 コンビニ内のブックスタンドで、週刊誌を整理中の皓(しろ)を取り巻きからかう4人。

 

 1人が皓(しろ)の腕を掴もうとした瞬間に、頭の中に声が響く。


 『お前ら殺すぞ·······』


 人間の声ではない。動物?いや獣?いやそれ以外のものの声。大声で叫ぶのでない。静かに囁く、脳みそを、体の肉を、ノコギリでガリガリと引き削るような囁き。


 硬直する4人、目に見えぬ恐怖に、全員が前を後ろを汚している。触れてはならぬのだ。この美しい女に·······


 レジに並んだ5人、レジ前に立つ美少女魄(たま)を下品に揶揄う。


 「可愛い嬢ちゃん。どうだい、これから俺たちと遊びに出かけねぇか?気持ちがいいこと教えてやるからよ」


 伏せていた目を上げ、5人のうちリーダーらしき男に視線を落とす。何も言わずじっと見つめた。


 桜色の柔らかな小さな唇が開き、心を蕩かすような可愛い声が、薔薇のように甘く流れた。


 「早く出ていった方がいいわよ。居なくなっちゃう前にね」


 居なくなっちゃう?

 どういう意味だ?

 誰が居なくなるんだ?

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