第5話 闇が集いて

 600万円超で購入した1993年式R32、GTRで初乗りドライブを楽しんでいた。


 まだ20代前半の大企業の御曹司と恋人は、突然の衝撃に、運転していた男はステアリングに顔面をぶつけ、額から血を流し、助手席の女はボンネットに胸を強打し悲鳴をあげた。


 「キャーッ、痛い。明、どうしちゃったのよ!」


 「わかんねぇよ、な、何なんだよっ!」

 

 GTRの前の濃い闇が集い、見たことなどない異様な形を結んでいく。闇の中に2つの蒼白い焔が、まるで獣の眼のように禍々しく光る。


 帝都であっても西多摩の奥なら、熊なども生息しているだろうが、ここは帝都東京の中心である立川市に隣接する昭島市である。獣など出現するはずなどない。


 体高3メートルは超える巨大な闇の塊がゆっくりと迫ってくる。慌てることなどない、獲物はただ怯え震えて、喰らわれるのを待っているのだ。


 「あ、明、怖いよ。何かいるよ·····」

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