第4話 魔宮沢

 最凶魔域といわれる宮沢近辺には、神社仏閣が多く設立されているのも、古からの防国対策のひとつである。


 この宮沢地域は『魔宮沢』と称され、昭島に住む魔界市民であっても、禁足地として近づかないのは当然である。


 黒い夜空に死人の肌のように蒼白い月が浮かんでいる。時刻は既に2時を過ぎ『丑三つ時』と呼ばれる不吉な時間である。


 悪夢を予感させるような生暖かく、そして背筋を凍らす風が、人影ひとつない街を吹き抜けていく。旧奥多摩街道と新奥多摩街道が交差する魔宮沢の交差点には、漆黒の闇がどろりと濃く澱んでいるようだ。


 交差点の真ん中で澱んだ闇がさらに凝縮し、溶けた漆黒の闇の中で異界との扉が開かれ、禍々しい人外の恐怖が産まれた。


 ほんの数分程前である。魔宮沢伝説を知らぬ愚かな他県来訪者が、深夜の車道を進行中に、巨大な何かに激突し車は大破。事故の衝撃に傷ついた若いカップルの苦鳴が車の中に響いていた。

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