最終話


 今はまだ陽の昇る前という事もあって、運河沿いには野良犬猫や鶏がおこぼれを貰う為に待機している状態だ。

 リーデルが来るのを見て、早めに飯にありつけるのでは? と近づいてきた者達は、彼の醸し出す敵意を敏感に感じ取り、慌てて視界の外まで逃げていった。


「…………」

「…………」


 暫く重い沈黙が二人の間を支配していたが、先に口を開いたのはターヴィの方だった。


「一つ聞いて良い?」

「何だよ?」

「いつから影響を受けてたの?」

「……」


 ターヴィの視点からでは、リーデルの表情は見えない。


「……最初にメオってガキに近づいた時からだよ。決まってんだろ。というか、周りで死んでた女達も既に寄生されていて、自殺したと考えるべきだろうな。そこに丁度良いタイミングで俺が来ちまったんだ」

「……そう」


 ターヴィにとって、それが真実かどうかはどうでもいい事だ。

 リーデルはリーデル。その中にほんの僅か隠れていた『何か』が顔を出そうと、再び閉じられようと、契約を交わした持ち主であるという事実は変わらない。

 だからターヴィはこう言う。これからも変わらず、死が二人を別つまで。


「ねぇ、リーデル」

「なんだよ」

「この先何があっても、貴方がどう変わっても、私は貴方の味方だから」

「……そうかよ」


 こうして、二人はリオハの街を後にした。

 決して流される事の無い、罪の重さを共に背負いながら。

 




  磨かれた爪に原罪の糸を垂らして


        終幕

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磨かれた爪に原罪の糸を垂らして レイノール斉藤 @raynord_saitou

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