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「こうして人形になって確信した。人に寄生して感情をコントロールする。まずは他人に好意を向けさせて、次の宿主候補を近くに置く。充分に成長したら今度は自殺衝動を引き起こし、傷口から体外に出て次の宿主に寄生しに行くんだ、卵を植え付ける為にな。痛みで咄嗟に【癇癪持ちの子供デッドライン トイボックス】を発動した時点で、奴等にとって俺は『用済みの死体』となったから、こうして出てきたって訳だ」


 バラバラになった肉片を寄せ集めて一つずつくっつけながら、リーデルはここ数日の間に自身の身に起きた事象を説明した。


「何その能力、じゃなくて習性? 誰かが操ってる訳じゃないの?」

「ああ、ただまあ…敢えて名付けるなら【弱虫の生存戦略パラサイト・ラブ】って所か。だがまぁ、生きる為の強さにも色々あるってことだな。危なかったぜ、俺の能力が別の何かだったら助からなかったすだろうな」

「ちょっと! 冷静に反省してる場合じゃないでしょ! このままじゃ教会の皆…ううん、この町中に被害が広がっちゃうわよ!」

「……」


 焦るターヴィを横目に、リーデルはゆっくりと全身を元通りに復元し終えてから、暫くターヴィの方を無表情に見つめ、一度大きな溜息を吐いた後、吐き捨てるように言った。


「!!」

「寄生虫があれだけな筈無いだろ。アイツらも俺も同じだ。生きる為に他を犠牲にしている。ただそれだけだ。結果強い方が喰らい、弱い方が肉になる、当たり前の話だ。…もしかしたら『アレ』は人類にとって脅威となるかもしれない。何とかしようと命懸けで足掻く奴も出てくるだろう。『人類の存亡の為』とか言ってな。だがな、それは俺じゃない」

「リー……」


 ターヴィがリーデルの瞳を見つめる。もうそこには、この数日あった迷いや優しさは一切かんじられない。

 変わった訳ではない。いや、初めからリーデル自身は何も変わっていなかったのだ。

 そこには僅かに苦々しい後悔と、酷くバツの悪さが隠し切れていなかったけれど、今のターヴィにはそれを笑う気には到底なれなかった。


「……」

「……」


 暫く無表情でリーデルを見つめていたターヴィだったが、どこか安心したように微笑を浮かべながら首肯する。


「……ええ、そうね。わね」

「良し、こんな町さっさと出て行くぞ。人形化が解ける前に離れないとまた寄生されかねないからな」


 リーデルが膝をつき、両手を伸ばしてターヴィを持ち、肩に持っていく。後はターヴィが自分で座り直す。これからも、リーデルと同じ目線で世界を見る為に。

 いつもの動き、いつものやり取りだというのに、何故かターヴィはそこに懐かしさを感じていた。


ドサッ!


「……」


 二人が屋上を去り際、背後から、いや、その更に下の方から音がした。

 互いに振り返ると、そこには何も無かった。

 そう、姿


「……行くぞ」

「ええ」


 こうして扉は閉じられた。

 屋上へと続く扉と、

 もしかしたら有り得たかもしれない、

 未来へ続く扉もまた、永久に。

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