5-2
「ただいまー!!」
ある程度予想はしていたが、この館に巣食う悪魔がやって来た。
「お? 誰だよおまえー! 新入りか?」
「……」
「ちょっと、やめなさいよ、いきなり絡むの」
しかも三人。一人は俺より背が高く、態度こそガキ大将のそれだが、日焼けした二の腕と肉体労働者特有の体つきを見せる。もう一人はやっと一人で歩けるくらいだろうか、こちらに対し見知らぬ大人という認識だろう、姉の立ち位置な三人目の後ろに隠れている。三人目は男を嗜める役所か、太い眉と黒髪を逆上げて男の肩を小突いていた。
「お仕事お疲れ様。この子と、その妹が暫くここに住むから、色々教えてあげて」
「はーい」
突然見知らぬ人間が居て、しかもその世話を任されても即答する子供達。孤児院化した施設だろうとは思ったが……。
{おいおい、ここは普段からこんな感じなのか? こっちは展開の早さに全くついていけてないってーのに}
「あ、かわいいー! お人形さんだー!」
{げっ!}
一番小さな子がターヴィを見て指をさす。さっきまでオドオドしていたのに、その目は既に宝物を見つけたトレジャーハンター……いや、獲物を見つけた狩人の方が近いか。
「なんだお前、男の癖に人形なんて持ってんのかよ」
「こら、アルザス、人の趣味にケチ付けちゃ駄目でしょ! 外の仕事教えてあげて」
「へーい」
「…で、リーデル君。外での作業にそれ邪魔でしょ? ビニャに、あ、この子の名前ね、ちょっとだけ貸してくれないかな? 丁寧に扱うからさ」
笑顔を向けながらも嫌と言う返事を許さない雰囲気……バローロもそっち側の人間だった。まあ、当然と言えば当然だが。
「……どうぞ」
肩に乗せていたターヴィを女の子に渡す。「後で刻む」という呟きは聞こえなかった事にした。
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