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「目が覚めたら全く見覚えの無い場所で寝ていたんだ。戸惑うのも無理ないだろう。そのまま暗闇の中を彷徨って、高所から足を滑らせて……。私が注意を怠ったばかりに、すまない」
バロークスはメオの亡き骸を腕に抱き、だれに言うでもなくそう呟いた。或いは、それは神への懺悔だったのかもしれない。
***
翌早朝、埋葬が行われた。
と言っても棺なんて大層な物は無い、皆で土に埋めて祈るだけだ。見れば同様の末路を辿ったのだろう盛り土があちこちにある。何処にも行く宛の無い者達が最後に辿り着き、眠る場所としては此処は悪くないのかもと思ったりもした。
その土の上には例外無く何かしらの花が植えられていた。そして今、バローロの手で新たな墓標が植えられる。
{ろくに話もしなかったな……}
ましてや彼らにとってはいきなり転がり込んで来たお荷物達だ。それを全員躊躇なく受け入れてくれた。きっと、かつて皆がそうしてもらって、今までもずっとそうしてきたのだろう。
{そうだ、こんなのはどこの世界でもよくある事で……}
{あくまでも日常の一コマでしかない}
{むしろ狩る側の人間だ、俺は}
{そもそも知り合いですらない}
{なら、なんで……}
「お兄ちゃん。泣いてるの……?」
「……ビニャ」
{こんなにも悲しい気持ちになるんだ?}
この場の誰もがメオと関わりは無い。なのに誰もが悲しんでいる。祈ってくれている。心配してくれている。同じ気持ちを一緒に背負ってくれている。
「リーデル…」
「バロークスさん……」
祈りを終えた僧服のバロークスが俺の目の前にやって来て、手を差し出す。
…なら、受け入れるべきだ。この気持ちも、彼らも。きっと、メオが俺を導いてくれた、彼らと巡り合わせてくれたんだ、と。
「今日から、君は私達の家族だ」
「…………はい」
武骨な右手に自身の両手を重ね合わせる。互いの手には罪という名の血が染み込んでいる事だろう。それでも、今はその手を受け入れたいと心から思った。
いつか、メオの隣で眠る日が来てくれる事を願いながら。
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