意図がはっきりしない話
工藤は賑わうフードコートで暇をもてあましていた。、東の声が頭に響く。『何度も言いてるよね。』朝のミーティングでガミガミと叫んでモチベーションを下げる言葉を放ってくる。何度も言っていると言われても、いつも出勤しているわけだもないし、いちいち覚えていない。
「ねえ、僕のお母さん知らない」
男の子に話しかけられた。
「しないけど」
「そうなんだ。じゃあ頑張って探そう」
赤い帽子の上下グレーのスエットを着た小学生が幼稚園児ぐらいの男の子はその場を去って行った。
隣の席では、スマホで動画を観ながらオムライスを食べている。先ほどの別れる話をしていた人が「もう、疲れたの」と言って立ち上がり、「俺の方が疲れる。別に今別れなくていいだろう。」女性のため息が聞こえた。俯いて女性は、男性と距離をフードコートの出入口を通って取って去って行った。
「ねえ、僕のお母さん知らない」
また、男の子がやってきた。
「ごめんなさい。辰也君、お願いだから人に迷惑をかけないで」
辰也と呼ばれ男の子は振り返って、呼ばれた人物を見た。工藤は見ると、さっきまで別れ話をしていた女性だった。辰也の腕を引っ張って、連れて行こうとすると、辰也と呼ばれた男の子は「触るなや」と叫んだ。「僕この人知らないだよ。助けてよ」と工藤の方を見た続けて言った。「じゃあなんで、辰也と言われて振り返ったの?」と聞くと、辰也は焦ったように「ええ、分かったんだ」と不貞腐れた顔をして、どこかに行こうとする。その腕を女性は握って、 「ご迷惑をおかけして、すみません。行くよ」と引っ張っていった。「陰湿ネクラババア」とボソッとつぶやいて、辰也は連れていかれた。隣で、笑い声が聞こえてきた。隣の席で動画を観ていた人だ。その人と目が合った。
「すみません。陰湿ネクラババアですか。お似合いですよ」
「どういう意味ですか」
「あなたのことでしょう。たぶん」
工藤は頭の血の気がこみ上げってくるのを感じた。
「では、これで」
その人は自分の失言など、感じてもないようで微笑み、年齢に合っていないようなロリータ服を着て、鞄に多くのキーホルダーを付けて音を鳴らしながら、お盆をもって、隣の席を離れて行こうとしていた。
「ありがとうございます。教えてくださって」と意味の分からないことを口走ってしまった。なんだろう。辰也と呼ばれ子は誰に向かって、陰湿ネクラババアと言ったのか不明だった。連れていって女性のことか、それとも工藤のことか。もしくは工藤にお似合いですよと言ったロリータ服の女性のことか。人の言葉など、本当の意図など発言した本人にしか分からないのだ。確かめようのない話だ。
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