第3話
駐車場の奥は石段のある
立て看板の側では一人の男がこちらを見下ろしている。カーキ色のオーバーオールに麦わら帽子を被った大柄な人物が顔を向けて留まっていた。遠さと逆光のせいで表情までは分からないが、服装と身長の高さから見ても男性だろう。見返しても動き出さない様子から、このキャンプ場の従業員に思えた。
友美は気まずい空気をいなすように
木の杭を支柱にして宙を浮かぶようにカカシが立っている。駐車場から見上げると支柱の部分は
友美は鼻で小さく
キャンプ場は管理小屋を北側の縁にしたシェラカップ状というか、底が平らなすり鉢状に敷地が広がっている。手前には短い草の生えた広い砂地があり自由にテントが張れるフリースペースとなっていた。その奥には東西を横断するように川が流れ、橋を渡った先には南側の斜面に沿って数軒のバンガローが建っている。こちらはテラスでバーベキューをして室内で寝泊まりできるようになっているようだ。
バンガローは丸太小屋をイメージした雰囲気ある
カカシはおのおの体格や服装を変えつつ敷地に点在している。もはや騙されることはないが、テントを張る際の障害物にならないだろうかと気になった。いや、むしろこれはロープや白線を用いずにテントサイトを区切るために立てられているのかもしれない。カカシを避けてテントを張れば、おのずと見えない一区画を
もしそうならば考えたものだが、それなら樹木でも植えたほうがふさわしい気もする。やはり単なるオーナーやスタッフの趣味か。似たり寄ったりな他との差別化を狙ってのことか。ひとまず友美の頭には、カカシのいるキャンプ場と記憶された。
四
管理小屋はやはり手前に立っている三角屋根の広い建物だった。正面へ回ると看板の下に『受付・売店』の表記があった。建物の右隣にはトイレとシャワー室があり、さらに共用の水場とゴミ捨て場が設けられている。左隣は
小屋に入ると右が受付で、左は売店になっている。さらに奥にもう一つ広い部屋あり、そちらにはテントやウェアや焚火台などキャンプ用品が販売されているようだ。売店ではカップラーメンやアイスクリームなどの軽食から、紙コップやウェットティッシュなどの日用品、さらにバドミントンのラケットや水鉄砲、それにシャボン玉ができる
シャボン玉の玩具は息を吹きかけて飛ばすオーソドックスなものから、ドライヤーのような形状で大量に噴射できる電動式の物まで多数揃えられていた。汚れることを気にせずに遊べるのでアウトドアの定番だ。それを前にして2人の子供があれこれ触れて遊んでいる。小学生高学年くらいの女の子と未就学児くらいの男の子。恐らく姉と弟だろう。2人とも右の手首に緑色の虫
受付カウンターには三十代くらいの男がいた。直線的な眉に目尻の下がった顔つきで、鼻の下と
キャンプ場のスタッフらしく、筋肉質のスポーツマン的な印象がある。うつむいて何やら事務仕事をしているようだが、
「あの……」
「はい、なんでしょうか」
野島は
「……キャンプ場を、使わせてほしいんですけど」
「ええ、どうぞご自由に」
「いえ、そうじゃなくて。初めて来たので受付を……」
「あ、はい。受付ですね」
野島は妙に視線が定まっておらず、友美の顔を見たかと思うと右に
「それじゃ、ええと、こちらの受付用紙に名前や連絡先などをご記入お願いします」
「予約も入れずに来てしまったんですけど、大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「……一人の、ソロキャンプで、テントサイトで一泊、できますか?」
「はい、はい」
野島は目を泳がせたまま強くうなずいた。友美は軽く
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