第13話「叔父貴が人間のクズだったこと」

 2023/09/29、禁酒生活3日目(治療を始めて22日目)


 今日は、僕がアルコール依存症から脱却しようと思った理由の一つをお話したいと思います。

 僕とは全く親しくありませんでしたが、叔父貴のMという人がいました。

 M叔父貴は、一言で言うなら人間のクズでした。

 でも、いわゆる普通の酒クズ(飲んだくれダメ人間)ではありません。


 M叔父貴は青森市の老舗和菓子屋の二代目で、僕の叔母(父の姉)をお嫁さんにもらって夫婦となり、一人娘をもうけました。

 しかし、この男……酒と金にものすごくだらしない人間だったのです。

 M叔父貴の頭にあるのは「理想の和菓子を作ること」で、それだけ見ると夢追い人系のダメンズかなと思われるでしょう。しかし、まず第一に「会社を経営し、従業員を食わせていく気がない」という、恐ろしい社長でした。次に「理想しか見えず娘も妻もどうでもいい」という、なんだか物語の登場人物みたいなキャラクターだったのです。


 M叔父貴は老舗の二代目でしたが、ご覧の通りの人間でした。なので、あやしい人間たちにカモにされ、いいように金をせびられ、返せないのに借りたりして、最後には和菓子屋そのものをブン取られて死にました。

 死因は、アルコール中毒からの無数の内臓疾患です。

 ありとあらゆる臓器がだめになって、それでも飲んでました。

 本人は「緩慢な自殺だ」などと言っていましたが、いい迷惑です。


 一時期、根抵当として僕と両親の家と土地(M叔父貴から見て、妻の実家)を銀行に預けて、会社の運営資金を調達していました。でも、自分の家や自分の両親の財産だけは守っていたんです。そして、長物家のありとあらゆるものに手を伸ばそうとして、まあ、結果的にパッパに正論で論破されて撃退されたんですが。

 でも、たちの悪い人間の融資を受けて、結果的に会社を乗っ取られました。

 僕の家は、青森銀行の方々が事情を知って、M叔父貴同意のもとで根抵当から外してもらえました。根抵当というのはまあ「問答無用でなんの理由ででも、借金のカタとして奪えるジョーカーみたいな抵当物件」です。


 僕はM叔父貴を軽蔑しています。

 妻にも娘にも何も残さず、根こそぎ悪党に奪われたまま、酒を浴びるように飲んで死んでいきました。

 そんな彼の「緩慢な自殺」という言葉に、一番腹が立ちます。

 腹が立つのですが……それはでも、一時期の僕と同じかもと思うと、とても辛いし憤ってしまうのです。僕の酒量もまた尋常ではない量で、自殺願望があった時もありました。まあ、実際やってみて失敗もしましたが、ずっと「病気が治るなら死んでもいい」が座右の銘でしたから。

 でも、あんあヤクザな叔父貴と一緒は嫌だと思ったんです。

 僕はお酒が好きだからこそ、お酒を悪役にはしたくない。

 ただ、M叔父貴と僕とは、似てる部分もあるなと思うんです。それがまた同族嫌悪を激しく駆り立てる……その全てを否定するためにも、お酒との付き合い方に向き合うことにしたんですよね。

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