第6話「飲んでて記憶を失うこと」

 2023/09/20、禁酒生活13日目。


 昔、専門学校時代の寮生活で「飲むと人格が変わる人」ってのを見たことがある。普段は柔和で温和な気心知れたオタ少年なんだけど、飲むとオラオラでイケイケなオタ少年になる。しかも、チェンジ後の人格には設定が沢山あって「地元に彼女がいる」「かつて大事故で左手が消し飛んで、今の手はあとからくっつけた」などなど……正直、眉唾物でキャラ作ってる感じもあったけど、仲がよかったし楽しかった。

 まあ、ちょっと揉めたこともあったというか、僕が失礼だった時期もあったけど。

 でも、この人は別人格で痛飲したことを、次の日の朝には全く覚えてなかった。そういう設定なんだと思ったし、あれは多分彼が見知らぬ土地の男子寮で回りに打ち解けるための、言ってみれば処世術みたいな、演技みたいなものなんだろうなと思った。

 ちょっと前までは、そう思ってたんですけどね。


 最近時々、飲んでて記憶を失うことがある。

 飲みながらテレビを見たり映画を見たりしてるんだけど、突然時間がジャンプして、夜中の3時とかになっている。あれ? その間の時間は? って感じで、でもちゃんと酒は減ってるんだよね。

 いわゆる寝落ちなんだけど、その前後の記憶が全くない。

 ある日など、気付けばベッドの中で朝を迎えていたというね。


 これはいわゆる「寝落ち」なんだけど、医学的にはどうも「気絶」らしい。よくある、グッと飲んでグッスリ寝る、瞬間的に寝付く! ってのは、気絶と同じ原理らしいです。だから、なんだか身体から疲れが抜けない。

 当然です、寝てるんじゃなくて、気を失ってるだけですからね。

 ここ数年、頻繁に飲んでて寝落ちする、気絶する。

 しかも、その前後の記憶が全くないことが稀によくあったんですよ。


 因みにながやん、ソシャゲが好きでアレコレやってるんですが、失われた記憶の中でプレイしてたことが多々あって……とてもひどい目にあいました。FGOでは知らない間に課金してガチャをまわしてるわ(しかも爆死してるわ)、凄い楽しみにしてたストーリーが知らない間にクリアしたことになってるわ、アズレンも知らない間にあれこれ終わってるし、テキストを読んだ記憶が全くない。

 もう、一種のタイムリープみたいな感じの日々でしたね。


 で、禁酒と依存症治療を決意した訳です。

 この決定もまた、失われた記憶がやらかしたことで、心が決まりました。

 その日も僕は盛大に飲んでたんですが、二度三度と向かいのセブンイレブンで酒を買い足しました。多分、ストロングゼロを8本くらい飲んだと思います。

 そして翌朝……突然ベッドの上で覚醒しました。

 あれ、僕はさっきまで飲んでたんじゃ……そう思って目覚めた朝は、とってもやべーことになってました。

 まず、何故か仏間の戸のガラスが割れています。

 そして、眼鏡は何故かリビングの座布団の下から発見されました。

 何があったんです? いやいや、こっちが聞きたいですがな。

 マッマのことも酷く心配させてしまったみたいで、どうやら真夜中に酔って暴れたようです。最悪ですね……僕はこうして、自分のアルコール依存症を認め、禁酒と治療を始めたのでした。

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