第4話「あのアル中物語のこと」

 2023/09/15、禁酒生活8日目。


 毎日鬱々と近況を語っても、ね。

 という訳で、今日は一冊の本を御紹介したいと思います。

 アルコール依存症やアルコール中毒が、いかに恐ろしいかをドラマチックに描いた名著、中島らも先生の『今夜、すべてのバーで』です。

 大変に面白い小説なので、未読の方は是非!


 ざっくり雑にあらすじを紹介しますと、やや落ち目の物書きが大きな仕事の依頼を受けて、これを出世作にして再び返り咲くぞ! と原稿に向かいます。

 ん? どっかで聞いたような話ですね(笑)

 で、執筆作業を続けるんだけど、上手くいかない。やきもきと焦れる中で徐々に酒に溺れ、最後はアルコール中毒になってしまいます。そんな主人公が、入院生活を始めるところから物語は始まるんですね。

 この小説を読むと、アルコールの恐ろしさが身に染みます。

 主人公の心理描写、心境というものが迫真に迫ってくるんですね。


 僕は最初、この物語を友人に勧められても、やんわり読むのを避けていました。もしかしたら友人が進めてくれたサラリーマン時代、既に僕はアルコール依存症だったのかもしれません。心配してくれたのかもしれないんですよね。

 でも、読むのが怖かった。

 概要を知ってるから、とても怖かったのを覚えています。

 なんとなく、偉い人の説教が待っているような気がして、罪悪感が増幅されるだけじゃないかと思うと気が進みませんでした。

 でも、今は読んでみてよかったなと思います。

 本当にアルコールは恐ろしく、溺れた人間の無情な悲しさが伝わってきますね。


 作中、あれやこれやで肝臓をやられた主人公は、入院生活に入ります。そこで、同じ病棟に暮らしてる小学生くらいの男の子と仲良くなるんですね。その少年は聡明で明るく礼儀正しく、主人公と文学や科学知識の話で大いに盛り上がります。

 中年の主人公と少年は、年の離れた友人同士として楽しく過ごしていました。

 その頃には入院生活をナメプ舐めプレイし始めた主人公は、抜け出して公園で缶ビールなんかを飲んだりしてます。まあ、順調にアル中しぐさを深めていったわけですね。

 そんなある日、病状が悪化して少年が急死します。

 その少年は、とある難病で入院していたんですね。

 で、主人公は激しく悲観して嘆きます。何故、人間のクズみたいな自分じゃなく、清らかで優しい少年が死なねばならないのか。死ぬべきは自分で、彼のような未来ある若者こそが生きるべきではないのか、と。


 ここまで聞くと、なんだかイイ話ダナー! とも思うじゃないですか。

 ここからです。

 ここからなんです。

 主人公は真っ当な、ちょっと自意識過剰なまでの後悔を懺悔し、自分を顧みます。

 そして同時に……哀しみ落ち込む中で、身体がアルコールを欲するんです。そして、噂によれば霊安室には消毒用の医療用アルコールがある。えっ、マジで? と思うかもしれませんが、マジです。アルコール欲しさに、小さな友人が死んだその夜、主人公は霊安室に忍び込み、少年の遺体の横で医療用アルコールにむしゃぶりつくのです。

 これが、アルコールの怖さです。

 この主人公が最後にどうなるか、よければ読んでみてください。


 こんなシリアスな話じゃないんですが、僕にも似たような経験があります。

 真夜中に、どうしても飲みたい! けど、手持ちの小銭がない! でも飲みたい! そういう衝動に駆られて、でも家にはお酒がないんです。探したら、ちょっぴり一升瓶にいいちこが残ってたんですが、ほんの一口でした。しかも、いいちこを割るドリンクがない。

 でも、飲みたい。

 飲まないと死ぬ、そういう心境でした。

 で、ふと冷蔵庫を開けると……そうめんのためのめんつゆがあったんですねー(笑)結構、だしがきいてて美味しかったですよ、めんつゆハイ。

 アルコール依存症って、怖いなって今は思いますね。

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