第19話
「紹介しよう! こっちがビール職人のキャニー。こっちがチーズ職人のティサンだ。今回、我々に協力してくれることになった」
何気ない風にコウは三人に紹介した。
何気ない風であるが……キャニーはコウと腕を組んでいるし、ティサンは恥らう風ではあったが反対側でコウの手をつないでいる。ついでに言うならレタリーの顔はぴくぴくと引き攣っていた。
「あー……オレ様が言うのもなんだが……ちょっと考えた方が良いと思うぞ?」
「ま、まあ……い、いいんじゃないかな? 本人達の問題ですし……」
リーンは呆れ、作戦を命じたイサムも少しひいていた。
「……まあ、色々と思いがけないことがあったんだよ。思ったとおりのことしか起きなかったとも言えるか……。注文の物は全部もらってきたぞ」
ひどく疲れた顔でクローは二人に報告した。
「あれ? ワイン職人さんはどうしたんです?」
「コウ! 悪いものでも食べたのか? 体の具合でも悪いのか?」
聞きようによってはとんでもないことを口走る二人。
「仕方が無えだろうが! ワイン工房の時には俺は縛られてたんだよ!」
コウが怒りをぶつける。
「いや……その……さすがに世界一の……葡萄踏みの娘さんまで……」
小さな声でクローはごにょごにょと言った。
「あろうことか俺の女たちもクローに協力すんしよ!」
コウはそのことに一番憤慨しているようだった。
「まあ、ワイン職人の技術は習得してきたから!」
クローは誤魔化した。
「そ、それじゃあ……お二人に説明を……」
とりなす様にイサムは話題を変えた。
しばらくイサムは二人に説明するが――
「豆でビールさ造るだか? おら、豆でビールは造れないと思うべさ」
「私も……豆に……チーズの精は……住み着かないと……」
キャニーもティサンもいまいち理解できてないようだった。それでも――
「イサムもリーンもクローと同じく、俺が信用する男だ。俺の言葉と思って聞いてくれ」
というコウの言葉で無理やり納得させることとなった。そして――
「とにかく……その麹室というのを……一度……」
「そっだなぁ。とにかく室さ見ねばはじまんね」
という二人の言葉に従い、離宮へと移動することになった。
二人は結界で作った麹室にはたいそう驚いたが……二人ともに同じ指摘をした。麹室を綺麗にするべきと言うのだ。
ティサンは作業用の割烹着のような物の必要性を説いたし、作業に使う器具やふきんの類も全て煮沸消毒するべきと主張した。
ただ、厳密な消毒の知識が無いのか、イサムが用意していたアルコールには全く興味を示さなかった。それに三十六度計は全く理解出来なかったようだ。
「アルコール消毒の知識が無いのかな? それでも煮沸消毒は徹底するんですね。やはり専門家の考えは貴重です」
「で、これからどうすんだ?」
感心するイサムにコウが今後をたずねた。
「そうですねぇ……彼女達の注文を叶えたら……次は実際にやってみますか!」
イサムの言葉に三人は色めきたった。
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