第3.5話
「いや、ねーから! そういうのなしだから!」
「これは……こういうのはやらないのが『不文律』だと思うんですが……」
クローとイサムが呆れた口調で文句を言った。
「あれ? おかしいな……確かに成功したと思ったんだが……失敗してるぞ?」
リーンは二人の不平より、手ごたえを感じた魔法が実は失敗していたことに首を捻った。
力を失い消え始めている魔方陣には何も出現していない。
「……リーン卿、それはこういうことです――」
見かねたグネーが説明を買ってでた。
………………
「納得いかないのだ! 人間の召喚がオッケーで物の召喚がダメって……なんか納得できないぞ!」
拗ねた子供のようにリーンが言った。
「ですから……それは星の並びがですね――」
グネーが説明を続ける。
………………
「いまのリーンのアイデアはアリだな」
ずっと黙っていたコウが言い出した。
「……そうか?」
「アリ、ナシで言えば……完全にナシだと思うのですが……」
クローとイサムは口々に反論した。
「召喚は良く解からんが……とにかく失敗した。それは仕方ねえ」
「仕方が無いと言うか……絶対に試さないし、成功しないのが『不文律』と言うものです」
重々しくイサムは断じた。
「でも、リーンの……無ければ手に入れれば良いって発想は優れてると思うぜ?」
「どういうことだ?」
訝しげな顔でクローは訊き返した。
「胡椒と一緒だ。俺たちはこの異世界で胡椒をなんとかした。醤油と味噌だってなんとかなんだろ」
「それでリーンは失敗してるんだろ」
「だから! 魔法以外で……魔法は使うとしても召喚魔法以外でなんとかすんだよ!」
「ああ、なるほど。コウは造ろうと言うのですね、醤油と味噌を」
「流石リーダー。オレ様の考えについてきてくれたか」
グネーの説明に納得がいったのか、それとも説明されるのに飽きたのか、リーンが会話に加わってきた。
「でも……醤油と味噌ってどうやって造るのだ?」
リーンは素朴な疑問を続けた。
「恐ろしく簡単言うと……茹でた大豆を麹で醗酵させ、塩水に漬けたのが醤油、樽などに塩漬けしたのが味噌です」
いつものようにイサムが答えた。
「なんだ……意外と簡単なんだな」
拍子抜けした顔でクローは言った。
「……そうでも無いと思いますよ。まあ、魔王は倒してしまったのだし……時間はありますね」
イサムは考え込みながら応じた。
「よし、俺たち勇者パーティは醤油と味噌造りをするぞ!」
魔王討伐の時と同じ様に、行動の方針をコウが決めて締めくくった。
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