第3話
「ふふん。オレ様は閃いたぞ。困っているなら何とかすれば良いのだ」
唐突にリーンが言い出した。
「なんだよ……まだ続けるのかよ……」
ボロボロになったクローが呆れたように言った。
四人はしばらく本気の喧嘩をしていた。といっても、イサム以外は自分達の大事な恋人が同席している。無差別で大規模な攻撃方法はお互いに禁止していたし、イサムは『能力』が争い向きではない。巻き添えを含めて死人はでないレベルのものではあった。多少、城にはダメージがあったようだが……。
「まだ続ける……といった感じではなさそうですね。何かアイデアが?」
綺麗な顔をしたイサムがリーンに訊いた。
ちなみに純粋な個人の戦闘能力は強い順にリーン、クロー、コウ、イサムである。なのに本気の喧嘩で一番の無傷なのが……イサムの真の能力と言うべきかもしれなかった。
「無いなら手に入れれば良い! ただそれだけのことだ!」
リーンが胸をはる。「パンが無ければお菓子を食べれば良い」と言われた者の気持ちが解かる言い様だった。
「それが出来ねえから……こうなっているんだろうが!」
コウがツッコミを入れた。
「いや……オレ様の魔力に限界は無い! 醤油……ついでに味噌だな? いまここで何とかしてみせるのだ!」
リーンの『能力』は『全魔』という。
彼は全ての魔法系統が使用可能であり、全ての呪文を習得している。そして魔法のエネルギーである魔力も底なしで異世界で並ぶもののない強さを誇る。
彼が愛用の魔法の杖を生み出した闇から取り出すと……抜群の息の良さでクローとケマが部屋の中央にあったテーブルを移動させた。放っておくと破壊されてしまうからだ。
それを尻目にリーンが呪文を唱えだすと……彼の目の前に光り輝く魔方陣が構成されはじめた。
「凄い……魔力……」
グネーが感嘆の言葉を漏らした。
グネーは第一王女でもあるが、聖女として神聖魔法に精通したスペシャリストでもある。彼女だけがリーンの魔法を規格外と認識していたかもしれない。
「わが呼びかけに従いて来たれ!」
魔法が完成したのかリーンが大声で魔方陣に呼びかける!
「醤油!」
……続いたリーンの言葉に従って、魔方陣の中央に醤油のペットボトルが出現した。
「そして味噌!」
……その言葉に続いてビニールパックされた味噌が出現した。
「見たか! オレ様の魔力の凄さを! 魔術の冴えを! 醤油に味噌を召喚してやったのだ!」
異世界の青年達は望み通り醤油と味噌を手に入れたのだった!
【完】
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