第34話 魔剣祭7
それからレナと別れ無事Eクラスの寮に到着した。
Sクラス専用の寮を見たせいか、Eクラスの寮がしょぼく感じる。
そんな感想を抱きつつ部屋に帰る。
もう夜遅いこともあり、ロイドとレインは寝ていた。
一日中魔剣祭に向けての訓練をしているから疲れているのだろう。
俺は2人を起こさないよう音を立てずに自分のベッドに入る。
一週間が立ちようやく魔剣祭に向けての校内選が始まろうとしている。
担任によるとこの校内選の結果で個人のクラス変動が起こる可能性があるらしい。
言ってしまえば、上位に入ることが出来ればクラスが上に上がるし、下位になればクラスが下がる。
俺達Eクラスは仮に下位の成績を取れば即退学。
リスクがあるため、挑戦する人間は少ない。
ロイドとレインを含め、6人が参加予定だ。
対して他のクラスはほぼ全員が参加するらしい。
ロイドとレインにも退学のリスクがあるが、恐らく大丈夫だろう。
なんせ、特訓の成果を見せてもらったが、シエラの指導のおかげか推定Cクラスの実力になっている。
「じゃあ、頑張れよ。2人とも」
「おう。応援頼むぞ」
「頑張るよ」
レインとロイドはやる気満々のようだ。
後は、シエラにも声を掛けておくか。
そうして、俺はシエラを探しに行く。
「ノア、こんな場所で何してるの?」
そう、声を掛けてきたのはレナだ。
レナは試合着を着ていて準備を終えている。
「ちょっと知り合いに声を掛けに行こうとしてたところだ。」
「そうなんだ。ノアは、本当に出場しないんだね。」
「当たり前だろ。逆にレナは本当に出場するんだな」
そう言うとレナはため息を付いた。
「本当は出たくないんだけどね。」
「まあ、頑張れよ」
短い会話を終え、俺はシエラ探しを再開する。
数分探し回り見つけることが出来た。
だが、見た感じ精神統一をしている。
邪魔したら悪いな。
そう思い、声をかけずに観客席に移動する。
校内選は魔剣祭とは異なり一般の応援が禁止されている。
それにもかかわらず、観客席が満員だ。
それもそのはず、この学院には異常なほど教師がいる。
教師は校内選に参加しないため観客席に座っている。
教師以外にも、出番が最後の生徒やそもそも参加しない生徒が観客席にいるため席が空いていない。
俺は仕方なく立って観戦しようと思ったがある人物が声を掛けてきた。
「特等席で一緒に見ないかい?」
そう声を掛けてきたのは他でもない学園長だ。
俺はありがたく学園長に付いていき特等席で試合を見学することにする。
だが、学園長に連れられた場所は、実況解説の席だ。
実況する生徒と解説する生徒が俺を見て(誰だこいつ)という反応をしたが、気にせず開いていた席に座る。
確かにこの場所は観客席のどの場所に比べても見やすい。
ここでなら、シエラやロイド、レインの試合を見ることが出来る。
結果は何となく想像できるが、やはり楽しみだ。
「皆さん大変お待たせしました。ただいまより魔剣祭に向けての校内選を始めます。」
解説の生徒の声が訓練場に響いたとたん大盛り上がりを見せた。
始まったばかりだというのに、魔法で疑似紙吹雪が舞っている。
「今回は特別ゲストとして我が学院の学院長に来てもらいました!!」
「はい。特別ゲストの学院長です。今日は悔いの残らないように全力を出し切ってください」
学院長からは聞くことのないような(悔いの残らないように)という発言に少し驚いた自分がいる。
「では、早速第一回戦。選手は出場してください」
それから試合が次々と進んでいき、次はレインの番だ。
対戦相手はDクラスの生徒。
校内選はトーナメント方式になっており、対戦相手はランダムに決まっている。
そのため、極端に言えばEクラスの生徒がSクラスの生徒にあたってしまう可能性がある。
そんな場合に限り、敗北した時のペナルティーが無くなる。
まあ、Eクラスの生徒にとっては退学が掛かっているんだ。
Sクラスの生徒相手に敗北したら退学では苦情が来てもおかしくない。
その点、レインの相手はDクラス。
つまり、敗北したら退学になってしまう。
対戦相手とレインが適切な距離に立つ。
「開始」
審判の合図が鳴り、先制したのはDクラスの生徒だ。
相手はレインに土弾(アースバレット)を放つ。
威力はないが当たったら致命傷になる。
レインは自身の周囲に水の球を数個出現させ、そのうちの一つで相手の土弾を防いだ。
すかさず残りの水球で相手めがけて放つ。
水球は相手の腹部に直撃し、相手は気を失った。
レインの使った技はウォーターボールの応用。
恐らく校内選が始まる前に編み出した技だろう。
少し前までのレインならこんなこと出来なかったはずだ。
EクラスのレインがDクラスの生徒を倒したことにより会場は盛り上がりを見せている。
校内選で格上のクラスの人間に格下クラスの人間が勝つことはそうそうある事ではない。
これで、レインの2回戦進出が決まった。
レインは疲れた様子もなく相手と握手を交わし退場する。
ふと観客席にいるEクラス担任であるクラウスに目が行くと誰よりもはしゃいでいる。
大人とは思えないほどに。
よほど、自分のクラスの生徒が格上のクラスの生徒を倒したことが嬉しかったのだろう。
世界最強の魔術師が魔法学院に入学する @nano-a
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