第31話 魔剣祭4

翌日になり今日は休日だ。

レインとロイドは今日も今日とて魔剣祭に向けて訓練をしに行った。

俺はというと、何もやることが無くて困っている。

暇だし剣術部に行こうかと思ったが2日連続で行くのはさすがに迷惑と判断し、断念した。



俺は、ふとシエラが休日に何をやっているのか気になりシエラが住んでいる寮まで行くことにした。

サプライズ的な要素も含めアポは取っていない。


シエラが住んでいる寮は俺たちが住んでいる寮の反対側にある。



校舎が無駄に広いせいでシエラがいる寮に行くまでにかなり時間がかかってしまった。

シエラが住んでいる寮はSクラス専用。

見た目は貴族の屋敷のようだ。

俺たちEクラスの寮に比べたら予算が100倍いや、1000倍ほど違いそうだ。

それに、噂によればSクラスの人間は1~3年生合わせて20人ほどらしい。

20人でこの広い寮を使うとなると一人一人の部屋がかなり大きいことが伺える。

こんなことなら俺も入試の時に本気を出してSクラスになれば良かったと思う。

いや、そしたら平和な学校生活が送れなくなる可能性がある。

やはりEクラスで正解だった。

それに、ロイドとレインと友達になれたしな。

そう結論づけて、Sクラスの寮に入った。



中に入ると大きな竜の模型がロビーに置かれている。

模型とは思えないような迫力だ。

もしかしたら本物かもしれない。



そんなことを思いつつも奥へ進みシエラの部屋を探す。



広すぎて見つからない。

せめて何階に住んでいるか分かればいいのだが。



そこで、一人の生徒が俺の前を通り過ぎる。

「すみません。シエラ・ルミナという生徒の部屋を知りませんか?」

「あー。彼女なら2階の一番奥の部屋ですよ。」

ダメもとで聞いてみたが、聞いてみて正解だったな。



2階に連なる階段を上り長い廊下の先にシエラの部屋があった。



インターホンを鳴らし、しばし待つ。

すると、中からスタスタと足音が聞こえ、扉が開いた。

「暇だったから会いに来たぞ」

彼女は訪問客が俺とは思わなかったのか固まっている。



「何で来たのよ。」


彼女は少し慌てている様子だ。


「さっきも言っただろ、暇だから来たと。それよりも、意外とかわいいパジャマ着てるんだな。」


そう、シエラが着ているパジャマは子供用と思えるほどにピンクでふわふわだ。

彼女が少し童顔という事もあり、本当に子どもと勘違いしてしまいそうだ。



シエラは顔を真っ赤にして「少し待ってて」と言い残し扉を勢いよく閉めた。

俺としては、相手がパジャマ姿であろうと気にしないがシエラは気にするらしい。



数分待つと扉が開きシエラの服装が普段着ている学生服になっていた。

これはこれで悪くない。

そう思ったが絶対に口には出さない。

いや、出したら強烈な右ストレートが飛んできそうだ。



「とりあえず入って」


入室の許可をもらい「お邪魔します」と一言いって中に入る。



俺が住んでいる部屋とは違いやはり大きい。

俺、レイン、ロイドが3人で暮らしている部屋よりも大きいのだ。

ここまでSクラスからEクラスの差があるのか。

そりゃあ、俺以外の生徒は死に物狂いでSクラスに上がるよう努力するわけだな。



「あんまり見ないでよ。」


シエラは少し恥ずかしそうだ。


「悪いな。俺たちの寮よりも凄くて思わず見てしまった。」


「ノアならSクラスくらい余裕でなれるんだからなればいいじゃない」


俺の事情を知っていてこの発言をするシエラは悪戯をしている少年のような表情だ。


「意外と意地悪なこと言うんだな」


「ノアが、急に来たお返しよ。アポくらいとってから来てよね」


「サプライズのつもりだったんだが」


そう言うとシエラは少し微笑んでくれた。


「で、何するの?私の部屋何もないわよ」


何をすると言われても俺も予定がないから来たんだが。

俺はこの後予定を適当に考える。


「ノアが暇なら校内選へ向けて指導してくれない?」


シエラの提案はいい暇つぶしになる。

それに4年後に魔王軍が侵攻してくるとなるとシエラの強化も早めにしておいた方がいい。


「勿論いいぞ。じゃあ、俺の昔使っていた訓練場に連れて行ってやる」


そうして俺はシエラの手を掴み転移魔法を発動した。



俺が昔使っていた訓練場。

人一人いない。

たまに魔物が来るが俺の魔術の巻き添えで大体は死ぬ。



「何もない平野ね。」


シエラが見た通りの感想を言う。


「昔は森だったんだぞ」


そう、昔はここら一帯は木が生い茂っていた。


「俺が試しに神格魔法(ディバイン)を放ったら一撃で森が無くなった。」


「そ、そう」


俺との付き合いも長くなってきたシエラでさえも少し呆れている。


「ここなら、人もいないから魔法を気兼ねなく使えるぞ。」


「それもそうね」



そうして俺とシエラの訓練が始まる。


「じゃあ、まずは魔物討伐の時に教えたようにファイヤーボールを打ってみろ」


シエラは前方にある岩にファイヤーボールを放った。

岩はファイヤーボールの威力と熱に耐えきれずに原型を残さぬまま無くなった。


「良い威力だな。前にゴーレムを倒した時と同じ威力だった。」


シエラがゴーレムに放った時は少し溜めの時間が必要だったが、今は詠唱だけでその威力を出せるようになっている。

良い成長だ。


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