第30話 魔剣祭3
3人は俺に気づき近づいてきた。
「ノアー、何してるんだ?」
俺は観客席にいるにもかかわらずロイドの叫び声が聞こえる。
やはり、観客席とグラウンドの距離が近い。
校内選に出場したら、仮面をしていてもばれそうだ。
学園長に出した条件は正解だったな。
「3人の特訓を見ているだけだ。気にせず続けてくれ」
俺がそう言うと3人は再び訓練に戻った。
それにしても暇だ。
いつもならロイドかレインが話し相手になってくれているが今は特訓中。
邪魔するのも悪い。
それにシエラも同様に特訓中だ。
俺は訓練場から離れ一人で学院を探検することにする。
意外とこの学院は広、く行ったことない場所がたくさんある。
この機会だし色んな部活動を見学させてもらうのもありか。
部活と言えば、学園青春の第1位と言っても過言ではない。
何ならどこかの部活動に所属するのもありだ。
今は放課後という事もあり、ほとんどの教室が部活で使われている。
この魔法学院は部活が盛んで有名だ。
スポーツから文化、魔法、剣術、etcさまざまなジャンルの部活動が存在する。
俺はまず初めに剣術部を見に行くことにした。
魔法学院なのに剣術部があるのが少し意外だが、この世界には魔剣士という魔術を纏った剣を使用して戦闘する人間がいる。
これは魔法の技術も剣術も必要でかなり難しい戦闘スタイルだ。
だが、会得すればかなり強い。
俺も昔、挑戦しようとしたが、忙しすぎて断念した。
だが、今なら時間はいくらでもある。
早速、剣術部の部室である剣道場へ向かう。
「やーー!」
剣道場に到着するなりそんな声が聞こえてきた。
恐る恐る扉を開けると剣を持った部員が切磋琢磨、剣を振っている。
部員の一人が俺の存在に気づき近づいてきた。
「君、もしかして見学?」
「はい。迷惑だったでしょうか?」
「いや、全然。むしろ嬉しいよ。せっかくなら体験してみない?」
嬉しい提案に俺は速攻で承諾した。
「私はエルミナ・スカイ、剣術部部長ね。よろしく」
「俺はノア・ルクレアです。よろしくお願いします」
「ノアは、剣術に興味があるの?」
「はい。特に魔剣に興味があります」
「なら、剣術部はぴったりだと思うよ。見て」
エルミナが指さした方向には魔剣を用いて模擬選をしている部員が居た。
魔剣は本当に高等技術のはずだが、学生のはずなのにそこそこ上手く使っている。
俺は、その光景から目が離せなくなってしまった。
やってみたい。
「やってみようか?」
部長は俺の心を読んだかのような提案をしてきた。
防具を着て、魔力耐性のある剣を手渡された。
使い方は何となく分かる。
この剣に魔力を込めると剣に魔力が付与し魔剣になる。
使用者がどのような魔力を込めるかでどのような性質の魔剣になるかが変わる。
「じゃあ、この剣に魔力を込めてみて。属性はなんでもいいよ」
そう言われ、俺は好奇心で無属性魔法を込めてしまった。
その瞬間、剣の色が漆黒になり、小さいブラックホールが出現した。
まずい。
俺は剣の周囲に小さい結界を張りブラックフォールの被害を0にする。
その後、剣へ注ぐ魔力を無難な水魔法に変えた。
あまりにも一瞬の出来事だったため部長含め他の部員にも気づかれていない。
良かった。
水属性の魔法を込めると剣に水が付与されるのが目視で分かる。
「センスあるね。普通は始めのうちは魔力を込めるだけでも難しいのに」
他の部員がいとも簡単にやっているのを見て付与する程度なら簡単なものだと思ったが意外と難しいらしい。
俺は笑って誤魔化した。
「じゃあ、せっかくなら私と模擬選してみようか」
やはりこの先輩は俺がやりたいことをやらせてくれる。
お互い間合いの外で構える。
俺からすれば間合い内だが、それはどうでも良いだろう。
審判を他の部員が引き受けてくれてちゃんとした模擬選となっている。
「始め!」
審判の合図とともに部長は大きな一歩で距離を詰めてきた。
俺はそれを見て一歩下がる。
すかさず部長もさらに一歩詰めてくる。
が、俺はその行動を予測し下がったと同時に体の軸を前にし部長に切りかかる。
部長は小さな動きでそれを回避する。
回避行動は見えていたが、それを追ってまで切りかかると俺の実力がばれる可能性があるためわざと空振りをする。
その瞬間、俺に隙が出来、部長の剣が俺の背中に迫ってくるのを感じる。
避けれはするが今回はこれくらいにしておこう。
「勝負あり!」
部長の剣は俺の背中をとらえ軽く衝撃が走った。
部長と握手を交わし試合が終了する。
「ノア、やっぱりセンスあるね。私の初撃を躱すなんて」
「たまたまですよ」
その後も俺は他の部員の練習風景を見学させてもらった。
雰囲気はかなり良く、「アットホームな職場です。」と思わず言ってしまいそうになる。
これなら剣術部に入るのも悪くないか。
シエラを誘って入部しようと決めた。
一人じゃ入りずらいし。
寮に帰るとレインとロイドは帰宅していた。
だが、二人とも疲れているのか全く動いていない。
死んでいると言っても過言ではない。
いや、過言ではある。
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