第28話 魔剣祭
祭りから数か月がたち俺たちは4人で昼食を取っている。
4人というのはもちろん俺、ロイド、レインそれとシエラだ。
あの祭りをきっかけに仲良くなり最近はこうやってシエラを加え昼食を共にすることが多い。
もう、レインとロイドはシエラに対して緊張をしている様子はない。
慣れというのは怖いな。
始めはあんなにも緊張していたというのに。
だが、友人同士で昼食を取るというのも俺が思い描く学園青春の一つだった。
これも神リリアのおかげか。
そう思うと何かしらでお礼をしたいところだが、コンタクトを取る手段がない。
まあ、そのうち会えるか。
「ねえ、聞いてる?」
俺が頭の中で色々考えているとシエラの声が聞こえた。
何も聞いていなかったがここは嘘をつこう。
「ああ、聞いてるぞ」
「じゃあ、さっき何を話していたか言いなさい」
終わった。
何も聞いていなかったから話の内容なんて分かるはずがない。
ここは一か八か、
「昼食がおいしいって話題だろ。もちろん聞いていたぞ」
シエラは呆れた表情をとる。
その後ろではレインとロイドが笑っている。
良かった。
機嫌を損ねてはいないようだ。
最近はこのような些細なことでも友情にひびが入ると聞く。
そう考えるとこの3人は器がでかい。
「魔剣祭(まけんさい)よ。もうすぐあるって担任から聞いたでしょ」
魔剣祭?
何処かで聞いたことがあるような。
一度、思考を巡らせ思い出す。
そうだ、魔物討伐の時に一緒になった剣士学院のマルクが別れ際に言っていた。
だが、詳細は知らない。
「魔剣祭ってなんだ?」
俺がそう言うと3人は最大の驚きを見せた。
そこまでの反応を見せられると少し照れるな。
「ノア、魔剣祭知らないの?」
「ああ、知らない。」
「いや、ホームルームで担任の先生が説明してくれたじゃないか」
ホームルームは寝ていたし、それ以外の授業も基本寝ている。
始めは授業も新鮮で面白かったが座学の授業は代り映えがなく数回受けるだけで飽きてしまった。
最近は殆どの授業で寝ているか、自分の魔力で遊んでいる。
「しょうがないわね。私が説明してあげるわ。魔剣祭というのは魔法学院、剣士学院などの主に戦闘技術を学んでいる学院のほとんどを集めて一番の学院を決定する祭りよ。」
「有名なのか?」
「有名も何も、知らない人なんてノアくらいじゃないかしら?」
「そうだよ、僕も毎年見ていたんだ」
「俺も見てたな」
レインとロイドも当然の様に知っているようだ。
それほど有名な祭りも知らなかったなんて、どれだけ以前の俺は忙しかったんだ?
「それって、俺たちも出るのか?」
「いや、シエラはともかく僕たちじゃ出場できないよ」
「そんなことないわ。出場の機会は全員平等よ。まあ、校内戦を勝ち抜かないといけないのだけれど」
なるほど校内戦というものに勝てば出場できるのか。
まあ、俺とロイドとレインはEクラス。
この学院で最下位の実力だ。
諦めるのも無理はない。
一方でシエラはSクラス。
この学院で一番上のクラス。
魔剣祭の出場の枠がどれほどあるか知らないが出場を狙える範囲に入るだろう。
いや、3年生まで合わせると無理か?
「シエラはその魔剣祭に出場したいのか?」
「勿論。魔剣祭で良い結果を出せば評価が上がり順位が上がるもの。まずは出場の枠を勝ち取らないと」
シエラはそう言って闘志をむき出しにしている。
まあ、俺にはこんな行事関係ない。
俺が出場したら炎上確定だ。
恐らく試合にすらならない。
一歩も動かず全員を倒せる自信がある。
昼食の時間が終わり教室に戻る。
「朝のホームルームでも話したが魔剣祭に向けての校内戦が開かれる。参加したいものは俺のところまで来るように。以上」
担任の話が終わりやっと今日の授業が終わった。
「ノアは校内戦参加するの?」
「いや、しないが」
「そうか」
「レインは参加したいのか?」
「うん。せっかく魔法学院に入学できたんだから参加してみたいな。けど、一人じゃ不安で」
「そういう事なら大丈夫だ。」
そうして俺は一人の男を待つ。
数秒を立たずに彼は俺たちの近くに来た。
「じゃあ、レイン、俺と参加しようぜ」
この声の正体は期待を裏切らないロイドだ。
「うん。一緒に参加しよう」
レインは分かりやすく喜んでいる。
彼は男でありながら中世的な顔と少し内気な性格のせいで女と思ってしまうときがある。
正にその現象が今発生した。
怖いな。
だが、守りたいこの笑顔。
「ノア、少し来てくれ」
担任からの呼び出しだ。
悪いことはしていないはずだがやはり怖いものがある。
「何ですか?」
「お前、何か問題を起こしたか?」
「いや、何もしてませんが?」
「そうか、学園長からの呼び出しだ。すぐに校長室に行ってこい」
嫌な予感はしていたが的中してしまった。
学園長に行きドアをノックする。
「入っていいよ」
許可をもらいゆっくりとドアを開ける。
正面にはニコニコとした表情の学園長が座っていた。
俺はそれを見て静かにドアを閉め、家に帰る。
「話だけでもいいたらどうだい?」
学園長は一瞬で俺の背後に立ち耳元でささやいた。
背中に悪寒が走り戦意を喪失してしまった。
俺は流れるがまま学園長室に入り高級なソファーに腰を掛ける。
その正面のソファーに学園長が座った。
「では、単刀直入に言おう。魔剣祭に出てくれ。」
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