第25話 祭り

翌日になり、今日はレインとロイドがシエラと会う予定だ。


最近日課になっているランニングを終え3人で部屋に戻る。



「じゃあ、そろそろ行くか」


レインは少し緊張している。

そんなレインの背中をロイドは物理的に押し部屋を出た。




集合場所は学院の正門。

今日はイストラで年に1回行われている祭りが開催される予定だ。

親睦を深めるためにこの日に初対面をする予定を立てた。

我ながら気遣いが出来る男だ。

そう、心の中で自画自賛した。



正門に到着するとすでにシエラが居た。

今日は学院が休みという事もありシエラは私服姿だ。

学生服の少し凛々しい雰囲気とは異なり白色のワンピースを着ていて愛嬌のある雰囲気を醸し出している。

シエラの顔も相まって思わず見とれてしまいそうになった。



彼女はこちらに気づき少し微笑みながら挨拶をする。


「初めまして、シエラ・ルミナです。」


レインは緊張なのか、それともシエラに見とれているのか定かではないが固まっている。

変な間が空いたことで少し気まずさが残る。


俺はレインの意識を覚醒さるために背中を叩く。

レインはその衝撃ではっとした表情になりシエラに挨拶をする。


「初めまして。レイン・ウィンターです。特別試験の時は助けていただいてありがとうございます」


レインは嚙みながらも自己紹介を終えることが出来た。

それに続きロイドが自己紹介する。



「レインとロイドね。よろしく」


微笑みを崩さないシエラにレインとロイドは硬直する。



お互いまだ堅いな。

シエラは頑張って仲を深めようとしているがレインとロイドがまともに会話のキャッチボールが出来ていない。

コミュ力はあるはずだが、シエラ相手だと厳しいか。


見かねた俺は話題を提供することにする。


「レイン、シエラに渡すものがあるんじゃないか?」


「あ、そうだ。この前のお礼です」


そうしてレインは手に持っている紙袋をシエラに手渡した。


「開けてもいい?」


「も、もちろん」


シエラが袋を開けると中には俺と選んだ魔道具が入っている。


「ありがとう。大切に使わせてもらうわ」



この後も少し雑談し4人で祭りに行くことにする。

これで親睦が深まればいいが。

俺は共通の友人として彼らが仲良くなるサポートをしなければならない。





学院の外に出て少し歩くと祭りの会場に到着した。

ロイドはこのような催し事が好きなのかワクワクしている。

その様子を見て微笑ましく思う。


祭り会場には様々な屋台が並んでありシエラはりんご飴の屋台から目が離せていない。


ロイドとレインがいるから買いに行きづらいのだろうか。

仕方なく俺は3人に「買いたいものがある」と言って少し離脱させて持った。




「りんご飴4つお願いします。」


そして屋台のおじさんからりんご飴を受け取り3人と合流する。

俺は3人にりんご飴を一本ずつ渡した。


「サンキュー。それにしてもノアはりんご飴が食べたかったんだな。」


「ああ、甘いものが好きでな」


「僕もありがとう」


2人にお礼を言われ少し気持ちよくなってしまった。

シエラも「ありがとう」とお礼を言って来た。



「皆であれやろうぜ」


ロイドがそう言って指さしたのは魔法射撃だ。

これは買い物の時にやったゲームと同じで数メートル先にある景品に魔法を当て、倒すことが出来たら景品を獲得できるといういたってシンプルなゲームだ。

やはりロイドはこういうのが好きなようだ。



まずはロイドが挑戦する。

ロイドの狙いはお菓子の詰め合わせ。

前にいた子供がそれに魔法を放ったがびくともしていなかった。


それにも理由があり、実はこの手のゲームは景品の手前に防御魔法が展開されてある。

そうしないと学生レベルの魔法でも簡単に景品が倒されてしまう。

それに、魔法を生業としているものが魔法を放つと景品が壊れてしまう可能性もある。

だがら、景品を倒すには防御魔法を突破する必要がある。


俺は魔力感知を発動し防御魔法の質を見る。


質はあまり良くないが3重に展開されてある。

これなら前にいた子供が倒せないのも無理はない。



ロイドが手の平を前に向け得意の火の魔法ではなく、、、景品を労わった風魔法を発動する。

ロイドの放った魔法は防御魔法を1枚貫通したが2枚目の防御魔法によって威力を失った。


続いてレインの挑戦。

レインもロイドの敵討ちをするのか、お菓子の詰め合わせを狙っている。

だが、先ほどと同じく2枚目の防御魔法に防がれてしまった。


2人は俺の方を見て次はお前だと言わんばかりの表情をしている。

ここで俺が挑戦しても良いのだが、いい案を思いついた。



「お前ら、忘れてないか。シエラは魔法学院のSクラスだぞ。」


俺がそう言うと2人は忘れていたことを思い出したのか、シエラに挑戦してくれと頼んだ。

シエラは2人の頼みを快く引き受けた。



シエラは指定の位置に付き、手の平を前に向け狙いを定める。

そして風魔法を威力を調整し放った。


シエラの実力では景品が倒れるのは前提として景品に傷がつかないように威力を調整するのが大事だ。

それを本人も分かっていたのか倒れた景品に傷がついていない。

店主は景品をシエラに渡す。

その景品をシエラはロイドとレインに渡した。


「僕たちにくれるの?」


「勿論」


「じゃあ、皆で食べようか」


レインの提案は3人の仲を深めるのに良い提案になった。

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