第24話 買い物イベント

俺たちはこの国(イストラ)最大のショッピング施設ブルーに到着した。

この施設には日用品はもちろん魔道具、武器、回復薬などの基本的なものすべて揃ってある。


「すげー」


ロイドはこのショッピング施設の外観を見て感動している。


「初めて来たのか?」


「ああ、俺は田舎育ちだからな。こんな大きい建物見たことねえよ」


ロイドの反応を見ていると自分がこの施設を初めて見たときも似たような反応をしたのを不意に思い出した。


「とりあえず中を見て周ろう。」



レインの提案で俺たちはブルーの中に入って色々なものを見て周った。

1時間ほど歩き回っただろうか、2人は少し疲れている感じがする。


「少し休憩するか」


俺の提案で近くにあるフードコートに入り3人で軽食をとることにした。



「それで、何かいい物はあったか?」


今回の本題であるシエラへの手土産探しの進捗が気になり俺はレインに質問した。


「うーん。貴族相手の贈り物となると緊張しちゃってまだ決まってない。」


「ノアはその人と親交が深いんだろ、何かいい案は無いのか?」


ロイドは俺に案を求めてきたが生憎と俺もシエラと出会って日は長くない。


「これといったものはないが、一つアドバイスをするなら貴族相手とかそういうのを考えずに選んだ方がいいんじゃないか。前にも言ったが貴族と平民で差別をするような奴じゃない。正直な話、何を贈っても喜ぶと思うぞ。」


俺が今、通信魔法を使いシエラに欲しいものを聞くのも一つの手だが、それは何か違うと判断しレイン自ら選ばせることにする。




軽食を食べ終え再び手土産探しに行く。


「ねえ、ノア今更だけどその人ってどういう人なの?手土産の参考にしたいんだ」


そういえばシエラの情報はSランクで俺の知り合いとしか話していなかったな。

確かに相手のことを知らなければ手土産探しにも苦戦するはずだ。

俺は見通しの甘さに一人反省会をする。


「そうだな、名前はシエラで・・・・」


シエラについての情報を少しだけ共有し俺たちは魔道具店に向かった。



魔道具店には様々なものがありここにならシエラが気に入りそうなものがたくさんあるような気がする。

俺は一人で適当に見ていたが一つだけ目に入ったものがある。


「これ、すごいな」


思わず声が漏れてしまったがそれも仕方がないほどの性能を持った魔道具がおいてある。

その魔道具は小さめの球体をしており説明欄には〈魔力を蓄積しておくことが出来る〉と書いてある。

この蓄積がどれほど出来るかは定かではないが少量でも使い方次第ではかなりの効力を発揮できる可能性があると考える。


「何見てるの?」


俺がずっと見ていたのが気になったのかレインが近づいて来た。


「うわ、高!!金貨3枚って」


レインはその額に驚愕していたが俺からすれば金貨3枚程度なら1日で稼げる額だ。


「高い割にあまり性能はよくないね」


「まあ、そうだな」


俺の意見とは違うが、わざわざ否定するのも良くないと思いとりあえず同調しておいた。


「で、見つかったのか」


「うん。これにしようと思う」


レインが俺に見せてきた魔道具は氷の魔法が掛かっていて起動すれば程よい冷風を放出するというもうすぐ重宝しそうな魔道具だった。


「ああ、それならきっと喜ぶと思うぞ」


俺の言葉もありレインは嬉しそうに会計に行った。



会計から戻ってきたレインはきょろきょろと周囲を見渡しながらあることに気づいた。


「ねえ、ロイドはどこにいるの?」


レインがロイドの場所を聞いて来た。

俺は魔道具を見ているときにロイドが魔道具店から出ていく様子を一瞬目撃したが気にせず魔道具を見ていた結果ロイドの行方が分からなくなった。

もうすぐ寮の門が閉まる時間ということもあり仕方なく探知魔法を発動する。


「さっき、上の階を適当に見て周るって言ってたぞ。」


探知魔法を使ったと言えるはずもなく適当な嘘をついた。


「じゃあ、探しに行こうか」


レインの言葉で俺たちはロンドを探しに上の階を目指した。




ロイドがいたのは魔法射撃という期間限定のイベント施設だった。

魔法射撃のルールは魔法を数メートル先の景品に当てそれを倒すことが出来たらその景品をもらえるというゲームだ。

どうやら活発なロイドは買い物よりもこのような施設の方が好きなようだ。


「ロイド、そろそろ寮の門が閉まるし早く帰ろう。」


「悪い、これを取るまでは終われない。」


レインは少し困ったような顔をした。

俺は景品を眺め一つの景品が目に入った。




俺もロイドの隣に立ち担当者に参加申請をした。


その様子を見たレインは困り顔から絶望の顔に変わった。

だが、安心してほしい世界最強の魔術師にとってこんなゲームは目を瞑ってでもクリアすることが出来る。



参加が受理され俺は目当ての景品に魔法の照準を定める。

詠唱を適当にして風魔法を放った。

俺の風魔法はに命中しクマのぬいぐるみ目当ての景品を倒すことが出来た。

落ちたクマのぬいぐるみを担当者が拾い俺に手渡ししてきた。

シエラには色々と世話になったし今度プレゼントするか。

俺は心の中でそう思い次にロンドの方を見た。

ロンドの魔法は目当ての景品ゲーム機のような物に当たらず再度チャレンジをするようだ。

このままでは寮の門限に間に合わないと判断し俺は魔法の発動準備を周囲にばれない様に開始する。



ロンドは再チャレンジで魔法を発動した。

この魔法の軌道はおそらく景品には当たらないだろうと判断し俺は無属性魔法で魔法の軌道を変えた。

少し不自然な軌道を描いた魔法は景品に命中し倒すことに成功した。

ズルい気がするが、気が付かない方も悪いと考えこのことは頭の中から消すことにする。


「良かったな」


「ああ」


俺がロンドにそういうと魔法を放った本人が一番驚いていた。



その後、時間内に寮の門を通ることが出来たが部屋に帰り俺とロンドはレインに1時間ほど説教された。

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