第23話 帰還
魔法学院に到着し馬車を降りると早速く一人の人物がお出迎えに来た。
「2人ともお帰り。詳しい話は校長室で聞かせてもらうよ。」
到着するなり早々に校長に連れられ俺たちは校長室に向かう。
「で、魔物討伐はどうだった?」
椅子に腰を掛けながら早速校長は本題に入った。
「そうですね、初めて魔物の戦闘をしましたが、自分が思っていた以上に魔物の理解不能な動きに惑わされる場面が多々あり実践不足を実感しました。」
シエラの自己分析を隣で聞いていたが初めての魔物討伐にしてはよくやった方だと俺は思う。
確かに俺が居なければ危うい場面があったが剣士学院の2人との連携も見事なものだった。
「なるほど、そういう事ならこれから本学院でも剣士学院と同様に実戦型の授業を取り入れよう。だが、君たちの活躍は素晴らしいものだったと伺っているよ。しかも、ザトム軍の特別推薦をもらうなんて驚いたよ。これで、将来は安泰だね。じゃあ、ノア君にも魔物討伐の感想を聞こうか。」
校長は俺にも感想を聞いてきたが俺にとって魔物討伐は日常のようなもので特に感想など思い浮かばない。
特に今回はゴブリンやゴーレムなどのいつも俺が討伐している魔物に比べればかなり弱い部類だ。
魔族が出現したことは驚いたが、そのことは言えないしな。
取りあえずシエラと似たような事を言っておこう。
「俺も魔物討伐は初めてでしたが、なかなか自分の思ったようにいきませんでした。
剣士学院の生徒やシエラが居なければ死んでいたかもしれません。」
「なるほど、ということは君の実力をシエラと同程度と解釈していいのかな?」
「どうでしょうね。」
校長が俺の実力をどれほど把握しているかは分からない以上濁して答えるしかない。
「そうか、私の見立てではSクラス2位は固いと思うのだがね。では、最後に一つ聞かせてくれ、なぜ君は実力を隠す。」
俺が実力を隠す理由はただ一つ。
俺が世界最強の魔術師だとバレないため。
だが、そんなことは言えない。
「本気を出すのが面倒なだけです。」
「本当の事は言わないと言うわけか。」
「校長先生がどう解釈するのも自由ですが俺は真実を言いました。」
こんな探り合いも面倒になってきたな。
そろそろ解放してくれないだろうか。
それから30分ほど俺たちは校長と報告や雑談をし、やっと寮に戻ることに成功した。
「お帰りノア」
「お、久しぶりだな」
ドアを開けると早速ロイドとレインは出迎えをしてくれた。
「ただいま」
俺はこの3日間何をしていたかをレインとロイドに話した。
いや、半尋問のような形で喋らされた。
だが、もちろん本当のことは言えずに嘘7割、真実3割のほぼ俺の作り話を話した。
嘘をつくというのはここまで心にダメージを負うのか。
一通りの説明を終え、俺はレインに提案をする。
「なあレイン、前の試験でレインの分のポイントを譲ってくれた俺の知り合いにお礼がしたいと言ってただろ。明日、もし暇だったらそいつに会いに行くか?」
「もちろん合わせてもらうよ。まだお礼言えてないしね。」
「なあ、ノア俺も行っていいか?」
「まあ、いいけど何かあるのか?」
ロイドの狙いが分からず聞いてみることにした。
「ああ、Sクラスがどんな奴なのか気になってな」
なるほど、そういう事か。
確かにSクラスの生徒なんて普段会う機会なんてないし、雰囲気を見るだけで学べるものがあるかもしれないしな。
シエラにとっても友達を作れる良い機会になるかもしれない。
アイツがぼっちだということを不意に思い出した。
「そういう事ならもちろんいいぞ。じゃあ、明日3人で会いに行くか。」
予定が決まり早速、通信魔法を使いシエラに連絡を入れる。
「なあ、シエラ少しいいか?」
「わあ!!」
シエラの驚いた声が脳内に響き渡る。
「そんなに驚くな。俺の通信魔法だ。普通に喋っても俺に聞こえるし心の中で喋っても俺に聞こえるから好きな方で話してくれ。」
「通信魔法って、まあノアなら使えて当然か」
通信魔法もかなりレアな魔法だが、3日もの間俺と時間を共にしたシエラはあまり驚かなかった。
「で、要件ってのは?」
「明日、俺の友達に会ってほしい。魔物討伐に行く途中に話した通りだ。」
「それって私がその子の分のポイントを譲ったことになってる話?」
「ああ、それだ」
「それなら一つ条件を聞いてもらうわ。その通信魔法、私に教えて」
馬車でこの話をしたときは俺に借りがあるからという理由で条件もなしにレインと会ってくれると言っていたはずだが・・・
まあ、この通信魔法も後々教える予定だったし条件に飲むとするか。
「分かった、今度教える。じゃあ、明日集合場所は・・・」
一通りの説明を終え再び自分のベッドに腰掛けるとレインはシエラのことについて色々聞いてくる。
「ねえ、ノア明日手見上げを持っていこうと思うんだけど何がいいかな?その人って貴族でしょ。俺、あまり高いものは用意できないんだけど」
シエラはおそらく貴族だろうが、相手の手土産に文句を言うような人物ではないことは確かだ。
レインは少し不安に思っているだろうが、不要な心配だな。
「安心しろ。貴族だが、一般的な貴族と違って家柄で差別をするような奴じゃないしあまり高価な物じゃなくても普通に受けっとってくれると思うぞ。」
「そうか」
俺がそういってもまだ不安は解けていないようだ。
「じゃあ、今から明日渡す手土産を買いに行くか」
仕方がないので俺も一緒に買いに行くことにする。
「お願いしてもいいかな」
レインの顔が少し明るくなったような気がした。
やはり誰かが協力するというと気が楽になるのだろう。
「じゃあ、俺も行く。」
ロイドも行くことになり、俺が望んでいた友達同士で買い物というイベントが唐突に始まろうとしていた。
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