第9話 特別試験2

島について数分歩いていた時のことだった。


前方から一人の男が歩いてきた。




「アースバレット」




男は俺を見るなりアースバレット(土弾)を打ってきた。


俺はそれを難なく回避した。


アースバレットは俺の後ろに生えていた木に当たって木が粉砕された。




いい威力だ。


おそらくBクラス程度の実力だろう。




「いきなり攻撃して来るなんて危ないだろ」




「悪かったな。とりあえずお前の魔法石を渡せ、次は当てるぞ」




「渡すわけないだろ。てか、さっきも当てるつもりで打ったくせに」




「せっかくお前が無傷で済む提案をしてやったと言うのに。仕方がない、アースバレット」




男が詠唱し、また土の弾丸が飛んでくる。


俺はそれも回避する。


確かに少しだけ速度が速くなった気がするが俺からすれば止まっているのも同然だ。




「そんなものかお前の実力は」




俺は目の前にいる男を挑発する。




「うるせぇ、お前だってさっきから避けてばかりじゃないか。攻撃魔法に自信がないのか?」




相手はこれで俺を煽っているらしい。




「はぁ、仕方がない。本物のアースレットを見せてやるか」




ため息をつきながらアースバレットを放った。もちろん無詠唱で。




「がぁ」




アースバレットは男の腹を貫通してしまった。




「やっちまった」




威力の調整を誤ってしまった。


もちろんかなり威力を抑えて放ったつもりなのだがそれでも人を殺せる威力はあったらしい。


とりあえず俺は目の前の男のポケットから魔法石を取り出した。




「桃色か、それにしてもBクラスってここまで弱かったのか。」




俺はそんなことを思いながら目の前の男に蘇生の魔法をかけた。


2時間もすれば目が覚めるだろう。


俺はそのあともCクラスの生徒を倒し合計ポイントが21ポイントになった。




「さてと、そろそろロイドとレインを探しに行きますか」




歩き回ること約30分




「見つけた」




俺はロイドを見つけた。が、ロイドは魔力量的におそらくCクラスと思われる生徒と交戦していた。




「ファイヤーボール」




「雑魚が、何度やっても無駄だウォーターウォール(水壁)」




ロンドの攻撃は全くと言っていいほど相手の生徒には利いていなかった。




相性の問題もあるだろうが魔力量が違いすぎる。


このままではロンドが魔力枯渇を起こしてしまう。




「アースバレット」




俺はする必要のない詠唱をして相手の男に土弾を放った。




「くっ」




土弾は相手の男に直撃し男はその場にうずくまった。


さっきの戦闘で人が死なない威力が大体わかったからな、致命傷にもなってないはずだ。




「加勢するぞロイド」




「ああ、頼む」




「ロイド、俺があいつの動きを止める。そのすきにあいつを倒してくれ」




ここで俺が倒してもロイドのためにならない。


そう思い俺は敵の足止めだけをする。


とどめを刺すのはロイドだ。




「アースジェイル(土檻)」




「ロイド、今だ!!」




俺は相手の動きを封じてロイドに合図を出す。




「エンファイアアロー(炎の矢)」




ロイドの魔法は相手の男に直撃し男は気絶した。




「やったなロイド」




「ああ、助かった」




ロイドは男のポケットから魔法石を取り出した。




「よし、緑色だ。これで20ポイント分集まった。ノアはどうなんだ」




「俺もさっき21ポイント集めたばかりだ」




「あとはレインだな、探しに行くか。」




「いや、やめとこう。もうすぐ試験終了だ。時間内に指定の位置に行かないと俺たちも不合格になってしまう。」




俺なら転移の魔法を使えば大丈夫だがロイドはレインを探していたら間に合わなくなってしまう可能性がある。




「そうだな。レインもポイント集め終わって指定の位置に向かっていかもしれないしな。」




ロイドは俺の提案に同意してくれた。


俺たちはレインの無事を願う事しかできないのだ。


俺とロイドは1時間ほど歩いてようやく指定の場所ゴールに到着した。




「お、お前らこっちだ」




俺たちに声を掛けてきたのは担任のクラウスだ。


クラウスの周囲には同じEクラスの生徒が約20人いた。




「お前たちが無事でよかった。」




クラウスは泣きながら俺たちを抱きしめる。


意外とクラス思いの先生だな。




「先生、レインの姿がないのですがまだ戻って来てませんか。」




ロイドがクラウスに質問していた。




「そうだな。レインはまだ戻って来てないぞ」




クラウスがそう言ったとたんロンドの顔が少し暗くなった。




「ノア、悪い俺レインを探しに行く」




「だめだ、そもそもロイド、お前もう魔力がほとんど残ってないだろ。」




俺はロイドを止めた。


今にも魔力枯渇を起こしそうになっているのだから。




「でも、レインが退学になったら俺は絶対に後悔する」




ロイドは泣きながらレインを探しに行こうとする。




「お前が行ってもどうにもならない」




俺は強めの口調でロイドを止めた。




「仮にお前が探しに行って敵に出くわしたら対処できるのか?」




「………」




俺の質問にロイドは答えられない。




「俺が行く」




俺はロイドの肩に手をのせ宣言した。




「俺がレインを探し出す」




ロイドは自分の実力不足を痛感しながら震えた声で一言俺に言った。




「頼む」




俺はロイドを置いて再び島の中に入っていった。


残り時間はおそらく30分前後、俺なら探し出せるはずだ。


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