第8話 特別試験開始

「ノア起きて、朝だよ」




その声の主はレインだ。




「おはよう。いい朝だね」




「おはよう」




俺は自然に閉じそうになる瞼をこじ開けてレインに挨拶した。


時計を見ると午前四時だ。




「おせーぞ、ノア」




そう言ってきたのはロイドだ。


果たして午前4時に起床するのは遅いのだろうか。




「僕とロイドは一緒にランニングするけど、ノアも誘おうと思って」




友人からの誘いだ、多少めんどくさいが断るわけにはいかない。




「俺も一緒に走るよ」




俺はそう言ってジャージに着替えた。


俺とロイドとレインは横に並びながら校庭を10週ほど走った。




こうやって友人とランニングするのも悪くないな。




それにしても魔術師なのに体力づくりをする2人に俺は感心した。


俺も師匠に魔術師は魔力だけでなく体力を付けるのも必要だと言われて毎日数十キロ走らされていたっけ。




まあ、そのおかげで今では剣士並みに体力はある。




「そろそろ帰るか」




「そうだね」




ロイドとレインはかなり疲れているようだ。




寮に帰り朝食をとって3人で登校した。


教室につきチャイムが鳴り担任のクラウスが扉から入ってきた。




「特別試験の説明をする前にまずはこの魔法石を配る。失くすなよ」




担任は魔法石が全員に行き渡ったことを確認し特別試験の説明を始めた。




担任の説明で大まかなことは分かった。




つまりこういうことだ。


1,この特別試験は魔法石の奪い合いである。


2,この特別試験はS~Eクラスすべての一年生が参加する。


3,参加者は担任により12時00分に魔道具を使い学院が保有する無人島に転移させられる。(転移先はランダムである)


4,配布された魔法石にはポイントが存在する。


  Eクラスの魔法石(赤色)3ポイント


  Dクラスの魔法石(黄色)4ポイント


  Cクラスの魔法石(緑色)5ポイント


  Bクラスの魔法石(桃色)6ポイント


  Aクラスの魔法石(白色)7ポイント


  Sクラスの魔法石(黒色)20ポイント


  担任から配布された(現在手にしている魔法石)10ポイント


5,20ポイント以上で合格とする


6,即席のチームを組んでも良いものとする


7,24時00分に特別試験は終了しこの時間内に所定の位置(魔法石が位置を示す)に到着しなければならない。(到着しなければ例え20ポイント以上の魔法石を集めたとしても不合格とする)




大体のルールは把握できた。


俺は転移の魔道具があることに驚いた。


転移は自分と師匠しか使えないものだと思っていたが魔道具を使えば誰でも転移出来るらしい。


そして担任が言ってた「失くすなよ」の意味がやっと分かった。


この特別試験の肝は自分の魔法石を守りつつ10ポイント分の魔法石を奪うことだ。




「説明は以上。11時50分までこの教室で静かに過ごすように」




担任は一通りの説明を終え教室から出て行った。


おそらく他のクラスの先生方との打ち合わせがあるのだろう。




「なあ、もし島で合流したらこの3人でチームを組まないか」




そう言ってきたのはロンドだった。


ロンドはいつの間にか俺とレインの席の近くに来ていた。




「そうだね。3人で力を合わせればBクラスにだって勝てるかもしれない。AクラスとSクラスは無理だろうけど。」




レインがロンドの提案に賛成していた。




「俺も賛成だ。1人で動くより3人で動いた方が自分の魔法石を奪われるリスクが少ないからな」




俺の場合は1人で動いた方が効率はいいだろうけどせっかくできた友達だ。


俺の実力がばれないようにサポートしてやろう。


周りを見ると他のクラスメイト達も何人かで固まって作戦を立てている。




「効率的にはCクラス2人倒すのがベストかな?」




レインは唐突にそんなことを言い始めた。




「そう考えると自分のボタンを守りつつ10ポイント獲得するのってかなり難しいな。そもそも3人が出会えるかも分からないのに」




ロイドも弱音を吐いている。


俺がロイドとレインの分もポイントを集めてもいいのだがここで2人が成長しなくては次の特別試験で退学になってしまう可能性がある。


だから俺は今回、自分の分だけのポイントを獲得するようにする。


まあ、もしもの時は俺がSランクを倒して2人を救うけどな。


作戦会議をしていると担任が戻ってきた。




「今から転移の魔道具を配る。高価なものだから絶対に魔法陣触らないこと。」




おお、これが転移させる魔道具か。


俺は少し感動していた。




「では、今配った魔道具を机の上に置け。12時00分になったら自動的に転移するように設定してある。」




「目標は全員合格だ。皆頑張れ」




試験開始まで約1分を切ったところで担任からのエールが贈られる。


その言葉で少しクラスの雰囲気が明るくなった気がする。


時計の針が12時00分を指した瞬間に目の前が白く光り、光が消えたらそこは島の中だった。


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