第10話 烏鷺棋の解体処分

麻野さんが三観蔵として行き始めた頃、栗村さんにも変化が起き始めていた。資清として生きることを決めたらしいのだ。

父もスカーニーとして何をされたかというトラウマを清算できてから目の色が変わった。いよいよ恩賜芍薬を引き継がれることになるのか、と三閉免疫症候群たちは色めきたった。


あたしは一足早く、Lawem Daviwoodとして生活を始めていたからなんだか不思議な気分だった。

群青はその名前をあたしに合わせたいと言っているようだし、セオもしっかりと何かを引き継ぎたいと主張するようになった。

主張できるようになった、と表現することができる。

Libelaw家は長い間、主張すれば騙されるということを亜種白路によって経験させられてきた。いつしか言葉に意味がないことを痛みと共に学習してしまった。記憶の中枢に刻まれたネガティブサイクルは回転するごとにセオの神経を切り刻み、痛みに耐えかねて思考さえも偏ってしまっていた。

Effect reversalが発生して数ヶ月。ファリサイリバーの開門に最初は警戒していたセオも少しずつその回転が自分にとって順行であることを経験していった。


幼名である一般識別記号から、ひとりのMjustice-Law家の一員として元老院号へ、そして戴冠を意味する帝冠名へ。

あたしたちには3段階の名前があるというのが通説だった。

めぐみという名前は一般識別記号で今は元老院号としてLawem Daviwoodという名前を使用し始めている。

父で言えばスカーニーが元老院号であり、恩賜芍薬を名乗ることが帝冠名となる。


セオや群青は神殿翼で育ってきたから一般識別記号さえも持っていなかった。だからセオだとかスチュワートというのは仮の一般識別記号として認識されていた。


オルレアンやゲオルギ、アルバートたちになると審理冠人という位置付けになる。これもまた神殿幕の内側の習慣的な名前だった。


2024年1月に御簾が新調される。

神殿幕の中に神殿翼をも入れる計画で、残り2ヶ月を切って急ピッチで作業が行われている。



11月1日

Lawem Daviwoodは2024年1月からの神殿幕御簾化に伴い2023年11月1日をもって烏鷺棋自体の解体処分を決定した。

神殿に新調される御簾を持って幕とし、新たにLibelaw家とConsavayw家のみをJurywknow家の両翼として雇用する。単存の百舌鳥柄遺伝子、合存KTCの三閉免疫不全保持者及び亜露村遺伝子保持者、流浪遺伝子保持者のカマキリ、アリ、蚊、イナゴ科目はEffect reversalにより烏鷺棋と共に抹消されるものとする。

なお、烏鷺棋処分中の対象者の処遇は緘黙と幽閉状態を維持しながら順番を待つこと。





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