第4話 Enemy or Gossip

多胡開望の親友の藤村嶺司は三閉免疫系の出身者としてセブンティーンズで多胡と苦楽を共にした。最年長であることから多胡が問題を抱えたときは一緒になってセブンティーンズに掛け合うことも多かったいわば兄貴分のような存在だった。


2001年の多胡の事件により、開望は多胡の苗字を使うようになったわけだが、嶺司も同様に2009年から藤村と名乗るようになった。藤村と名乗るからには亜種白路側のひとつの業界の総支配人を任されるというのが亜種白路のならわしだったために、嶺司はヘアサロンを与えられることとなった。

「英語でhairの発音は相続人という意味もある。どうかな?」

高司や雅司は嶺司の表情を伺った。

「最高ですよ。彼女も喜ぶと思います」

翠蘭がその年、スカーニーと再婚した。かつての苗字を終わらせるには良いタイミングだった。

亜種白路の裏切り者、真司の名前を使って嶺司は2019年めぐみにある戦争を仕掛けていた。

「翠蘭と恵は血がつながっていない。めぐみを追い詰めても翠蘭を追い詰めることにはならない」

この頃臓器腐食はすでに終えていた、と言われる嶺司には臓器腐食どころか感覚鈍麻さえ認めることができない母親がいた。田島弓子である。田島弓子は麻野道信と再婚する前に嶺司を産んでいた。麻野は嶺司を利用価値があると判断して藤村の苗字を与えたのだが、田島弓子はそんな麻野に対してずっと不信感を拭えないでいた。

ジェラルド麻野の件も同様であり、息子を愛しているならなぜ麻野の苗字をくれなかったのだろう、、と。

所詮藤村というのは亜種白路のなかで労働者の管理者階級の苗字である。麻野でなければ理事にはなれない。理事であれば亜種白路の運営母体として決定権もある。


「サリエリとしての処分は麻野家だけでなく、藤村家も含まれる」

弓子はその決定が納得できなかった。

「うちの息子は夫と違って管理者階級です!処分は重すぎます」

「黒沼家と山蘇野家は9月23日に。百舌鳥柄と亜種白路、およびKTC所属員は9月中に。セバスチャンとビルの許可証がない外国人は10月末までに」

朗々と読み上げられる判決文に弓子は言葉を失う。

「あたしは関係ない!あたしは亜種白路から抜けたし、どこにも所属していない!!」

ミーガン・ラクーンが左端から大声で叫んでいる。弓子は忌々しく思えて、手に持っていた傘でミーガンラクーンの右目を突き刺した。

「あんたみたいな私欲だけで働いた人間が処分されるわけないでしょう。あんたは自殺しない限り生き地獄を味わうのよ」

読み上げの手間が省けたとバロウがニヤリと笑う。

「サリエリ該当者はEnemyとGossipに分けられるからその旨もEnemyから伝えるように」

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