第3話 why do you stay without mask?

ジェラルド麻野、須野糸成、麻野広道が陳情にやってきた。サリエリとアマデウスの面会は許可されていない。「カナリヤの名代です!」と言って聞かない。

「君たちがカナリヤの名代であってもアマデウスとサリエリの面会は許可されていない」

門前払いをすり抜けるのは物理的な彼らの体ではなく、門前払いの概念の齟齬なのだと理解するまであと数時間。

「僕たちはずっとあなたがたのために尽くしてきました。同じ貴族として、同業者として!同業者は競い合うものではないと思いませんか?共に繁栄していくものだと僕たちは考えるのです!!」

オルレアンはフランス軍に「追い返せ」と手で合図する。今日はスカーニーもグレースも公式にオルレアンを訪問する。Amadeusu Juryでの最初の公式会合となるのに、わけのわからない奴らが騒ぎ立てられては迷惑だ。穏便に迅速にさっさと追い返してしまいたい。


セオとスチュワートもグレースと共に来るはずだ。もちろんビルやセバスチャンも妻を伴って。スカーニーと翠蘭だって初の公式の場となる。

この後に及んでもMjustice-Law家を汚すのかとオルレアンは恩賜芍薬として筆を走らせようかと書斎に入る。

書斎のすぐ下に彼らがいるから、想像以上に具体的に執筆が進むだろう。

なにより、グレースとしてこの場を訪れるめぐみと彼らが遭遇しないことを祈るばかりだった。


「あら、ジェラルドさん、、、」

いつもより1オクターブ低いグレースとしての声が聞こえた。あの子は最近声の出し方をよく理解している。

「めぐちゃん、、久しぶり、、、」

懇願するジェラルド麻野と須野糸成、麻野広道の表情はまるで幼馴染に再会するような表情だった。

「そういう表情はやめてくれる?世間に帝都や基実くんだと誤解されると困るの」

広道の顔が曇る。不満そうなその顔にグレースは視線をジェラルドに移して続けた。

「貴族としての爵位の有効期限は1945年8月15日に終わっている。だから敗戦とは言わず終戦と言ったこと、カナリヤから聞いていないの?」

糸成が盾になり、反論する。

「そういうことじゃない!これまで共に戦ってきた同胞に対して論功行賞もないのかという話をしているんです!!」

「あなた方と私たちの組織は同じではない。あなたが盾になってジェラルドを守れば、その盾は私には矛となって胸を切り裂く。同胞ではないものに論功行賞を与えることは不可能です」

グレースとなっためぐみの両脇には帝都と基実ではなくセオとスチュワートがいた。ようやく全体像が見えてジェラルドの血の気が引いていく。もうなりすますことさえできないのだと。

「あなたの名前はジェラルドではなくて、忠健でしょう?」

忠健、その名はスカーニーがつけたとカナリヤが言っていた。

「お前はその名を絶対に使わないように。我々はもとは貴族だ。だから誇りをもってジェラルドと名乗るように。Mjustice-Law家は必ずアルファベットのミドルネームを持つ。我々ももとは貴族なのだからアルファベットのミドルネームを持つように」


Please put on mask if you go out there.There is shame on your face.

Be aware.

And at least hide it from us.


最低限のルールだけは守って欲しいものである。

孫たちの勇姿を書斎から見つめ、オルレアンは大きくため息をついた。


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