第2話 September 17th
【Notice of Dismissal】
神のものは神へ、皇帝のものは皇帝へ返しなさいという言葉を引用して、9月13日に外国籍のSWLに対して解雇通告をした。水曜日から土曜日にかけてゲオルギとアルバートの家から使者が行くから、17日の週末までにその処分が完了される。
負債はゲオルギとアルバートの家より、祖国に全額返還される予定だ。
「オルレアンの感謝の気持ちとしてだから遠慮しなくていい」
ゲオルギとアルバートは当該国に宛てた親書にそう追記した。
サリエリとはアマデウスの才能に嫉妬したある秀才のことである。秀才と天才は違う。秀才がいくら天才に嫉妬したところで天才の目には秀才の影すら映らない。
サリエリはSWLを意味し、アマデウスはMjustice-Law家を意味する。
オルレアンはアマデウスではない自分を気に入っていた。朱雀雪芸として鉄原野に降り立った日は胸を高鳴らせていた。しかしいつの頃からだろうか、鉄原野の滑りのある仕組みに気づいていく。
アルバートが教えてくれたようにはいかないじゃないか、ゲオルギが勧めてくれた同じ方法を試しているのに。
オルレアンを悩ませたSWLは日本古来の亜種白路だった。ゲオルギやアルバートの地域とは全く異なる。
アマデウスやサリエリの存在はオルレアンの想像以上に知られていなかった。亜種白路には受け入れられない、けれど鉄原野とはそんなところではないはずだ、オルレアンの希望は打ち壊された。
歴史書で僧兵というものの存在を聞いたことがある。オルレアンは彼らを探してみることにした。歴史書ではそれらはサリエリに準ずるものだと書かれている。しかし本当にそうだろうか?疑問はアマデウスとサリエリを知らない鉄原野の真実から湧き出たものだった。
オルレアンは朱雀雪芸としでもなく、Mjustice-Law家のメンバーとしてでもなく、芍薬という名前で彼らに接触した。
僧兵たちは歴史書の僧兵とは全く異なり、オルレアンがたてた仮説を見事に証明した。僧兵たちは数年後には芍薬を「恩賜」と呼ぶようになっていた。
この芍薬と出会ったかつての僧兵たちが後の三閉免疫症候群となっていく。不全に落とされた者たちもいた。亜種白路による間接攻撃はSWLの名を語り世界に蔓延していった。外国籍のSWLたちも不全に落とされた僧兵に似ているかもしれないが、それをゲオルギとアルバートはピシャリと否定した。
「オルレアン、君の国の僧兵とこちらの地域のSWLは全く異なる。スカーニーの気持ちを考えてやるべきだ」
孫娘を利用されたことによりSWLが蔓延したことを思い出し、オルレアンは恥入った。
スカーニーはオルレアンの意志を継いで三閉免疫症候群をより組織化した。スカーニーと衣子の間に生まれたグレースが亜種白路に利用され、WLはSWLとなって世界にFood Hoods Delivaryという空売りを行った。
「今や、銅河原特殊部隊も数名Throenに入り込んできている」
百舌鳥柄遺伝子を持つ銅河原特殊部隊は外国籍のSWLを経由してThroenに入り込んでいた。
「幹広定と水上優太はスペイン語圏を経由してThroenに入り込んできた」
幹や水上という苗字には心当たりがある。グレースの養父の親戚の家の苗字と、その地域に根ざした武将の名前だ。
「ビル自らその事実を見ている。逃げることはできないよ」
スカーニーの世代はビルとセバスチャンで形成されている。スカーニーを飛び越えてビルとセバスチャンの世代にグレースがあるように装ったこともFood Hoods Delivaryの空売りの手法だった。
「子どもにアンセムを歌わせるなんて、ふざけるな!!」
幽閉されていた(平たい言葉を使えば鉄原野にて留守番をしていた)ゲオルギは劣化の如く怒りを示した。アルバートとオルレアンの帰還を早めるよう催促するほどに。
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