第19話 棘
健康診断に引っかかった。
その名も
子宮頸がん異形成(軽度)
軽度なので、特に手術もないとの事だったが、
薬も無く、どうしたら良いのか聞くと、
美味しいものをたくさん食べて
たくさん笑って
たくさん寝て
ストレスを溜めない様にして
免疫力を上げましょう。
うーん。。。
なかなか高難度。
どーすりゃいいのさ。
周りに言うと、結構これで引っかかる事が多いらしい。
とりあえず、定期的に通院となった。
ヒロに話すと、ヒロは医療系の大学生なので、
やっぱり規則正しい生活をしないとダメだとの事だった。
特に今は、過労死レベルで動いている私を心配した。
『このままだと、心筋梗塞とか、そういう方面も心配だよ。スナック辞めれば?』
と言われても、スナックを辞めてしまったら、
子供たちのバレーボールをやらせてあげられない。
『大丈夫!ダメな時はダメって言うから!』
そう言う私を、ヒロは心配した。
今年もまた誕生日がやってくる。
33歳。
33歳…かぁ…
30代に突入したのも結構ショックだったのに、
もう3年も過ぎてしまった。
今年の誕生日も、売上を取る自信はあった。
ナナとは相変わらず会ってもいないし、
連絡も取ってない。
ユウとも会ってなく、連絡も減っていた。
9月末に来た連絡は、少しずつ仕事へも行けているとの事だった。
焦らなくていいんだよ、何かあったらすぐ言ってねと私はユウに伝えた。
今年も誕生日は前日のみ出勤し、大盛況に終わった。
最近は、ママからの嫌味もなく、稼げる私はママのいい道具と化している。
でもいいや、ちゃんとお金が貰えれば。
スナック終わりに、ヒロがまた海へとドライブに連れて行ってくれて、今年はお揃いの時計をもらった。
『ヒロ、いい人いないの?早く彼女見つけなって!』
私は今だにこんな事を言っている。
『梨花でいい。』
『“で”いいって(怒)』
『梨花“が”いい。』
わざと言わせる。
ちょうどユウからラインが入る。
“ハッピーバースデー!ずっと会ってなくて寂しいぞー!”
それをヒロに見せ、ヒロはユウさんと遊びに行ってきなよと言ってくれた。
ユウとヒロは会ったことはないけど、一緒に撮った写真を見せたりしていたので、お互い知り合い気分らしい。
“ありがとう!そろそろ会いたいぞー!”
と、私はユウに返信する。
『来月は長女とユウの誕生日があって、ちょうど1日違いだから、毎年一緒にお祝いするんだー!』
『俺も行きたいな』
『そーだねー。検討致します。』
『それ、絶対呼んでくれないやつじゃん!』
『ごめん、バレた?』
子供たちは定期的に父親に会っていて、仲がいい。
子供に会いたいと言うヒロには申し訳なかったが、
ただでさえ男の人を警戒するので、今ヒロを会わせるわけにはいかなかった。
そもそも、毎年ナナとネネも一緒にお祝いしてたけど…今年はどうなるんだろう。
ナナとは、全く連絡を取っていない。
そろそろ普通に連絡してみようかな…
返ってこなかったら悲しいな。
つい考え事をしてしまい、沈黙になる。
『梨花ぁー。ちゅーしていい?』
『やだよ。ダメ。』
つい意地悪をしてしまう。、
ヒロとのキスが大好きだった。
今までの下心丸出しの男たちとは違う気がする。
大切にされているような、
好きが伝わってくるような、
本当に愛おしいキスだった。
いつものように、ヒロが駐車場まで送ってくれる。
今日はこれでお別れになると思うと、
急に寂しくなる。
私はヒロに抱きついて、大好きと言った。
俺の方が好きだ、私の方が好きだと
高校生のようなやり取りをする。
こういうのって、何歳になっても変わらないんだね(笑)
毎日キツイけど、子供たちがいるから耐えられるし、ヒロに会えると思うと頑張れる。
一体いつまでこうしていられるんだろう。
ヒロがいなくなったら…私はどうなっちゃうんだろう。
いい子がいたらそっち行けと言って、本当に行っちゃったらどうしよう。
最近こんな事ばかり考える。
『ねぇねぇ、今のうちいっぱいちゅーしよ』
自分でもアホだと思う発言に、
ヒロがすぐさまつっこむ。
『何それ?悲しいこと言うなよ。別れるみたいじゃん。』
『そもそも付き合ってないけどね〜』
あぁ…また意地悪を言ってしまった。
私はこんなにも
ヒロにドハマりしていたんだ。
胸を指す棘は消えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます