第22話 終わり
「俺達の戦いはこれからだ」と俺は叫んだ
。
「まだ、ちょっと早いっすよ」とハリーが言った。
実際のハリーの声は、前歯が抜けて「すーすー」としか聞き取れない。
俺が補正して、聞き取っているのだ。
俺はボス戦に備えて、みんなを鼓舞したつもりだったけど鼓舞するのが早かったらしい。
老獣人曰く、ヤバヤバ森林には
産んでも子どもを主に食べられると思った村人達は、子どもを産まないという戦略を取った。村では少子化が加速したのだ。
日本に似ている、と思った。少子化が進む原因は子ども達に未来が無いからである。
少子化問題は他にも大きな原因があるけど、それは別の話である。
そして村で生き残った子どもは最後の1人になってしまった。
最後の1人になってようやく、村人達は命をかけて子どもを守る事にしたのだ。
大人の命より、子どもの未来の方が大切であることを最後の1人になってから気づいたのだ。
大人の命より、子どもの未来の方が大切であることが子どもがいなくなってからしか気づかないとは皮肉なモノである。
そして老獣人は見知らぬ俺達に助けを求めるために「戦うのじゃ」と言ったのである。説明を省かれたのは現在も戦いの最中で、説明している時間すら惜しい状態だったからである。
それを主との戦いに向かう道中で説明された。結局は老獣人は走る事ができず、歩きながら向かう事になった。だから説明する時間がとれた訳である。
村から外れた開けた場所。
そこで獣人達は戦っていた。
いた、と過去形になっているのは、その戦いが現在終わっているからである。
獣人達は主に倒され、地面に這いつくばっていた。200人ぐらい。もしかしたら、もっといたかもしれない。
主。
一軒家ぐらいの大きな猪。
その口周りに血が溢れていた。
何人もの大人達を食べられたのかもしれない。
鉄の匂いが充満している。
大人達が命をかけて救った子どもは、主の目の前で怯えていた。
残酷な現場だった。
ミカエルはスマホで映像を撮影している。
主は大きな口を開け、怯えた子どもを食べようとした。
「バイアグラ」
と俺は叫んだ。
バイアグラ、というのは俺が手に入れたスキルである。
体の一部を肥大化させ、カチカチにさせるのだ。
体の一部というのは、みなまで言うな。
朝起きるとカティカティになっているアソコの部分である。
人口の半分が持っているといわれているアレなのである。
なぜ、このスキルを手に入れたかというと、戦いの最中に焦っていて……みたいなノリじゃなくて、夜スマホをイジっている時にバイアグラというスキルがあったので効果を確認して、悩んで悩んで、スキルを購入したのだ。
このまま配信者として有名になれば、お金持ちになるだろう。お金持ちになったら女の子と出会う機会も増えるだろうし、なんだったらエチエチの店に行ってもいいよな、そういう時に体の一部をカチカチにするスキルがあったらいいんじゃねぇ? と思考して購入に至ったのだ。
すみません。私が犯人でございます。(えっ、なんの犯人?)
まぁ、そういう経緯で手に入れたスキルである。
でも戦いで使うのはなぁぜ?なぁぜ?
たまたまウルボロス戦の時に使ってしまったのだ。
ウルボロスが意外と可愛い女の魔物とか、そんなんじゃ無かった。
つーかウルボロスって大蛇だったし、大蛇にバイアグラを使って何になるんだ? って思っていたけど、脳みそにバグが起きてしまったのだ。
アレをアレして、アレしたら、フフフ、と脳内で思考を巡らせていた。
まぁ、コレでバズってお金が手に入ったら町に戻った時に3人には内緒でエチエチの店に行こうかな? と思っていたのだ。
だって男の子だもん。ドデカアタマ。
前世でも女の子とムフフな事をしたことがねぇーんだぞ。今世ぐらいムフフな事をしてもいいじゃないか? だってそうだろう。だってそうなんだよ。
ムフフな事がしたい、と思っていたら脳みそが混乱して、筋肉強化をしようとしたら新しく手に入れたスキルである『バイアグラ』を使ってしまったのだ。
あまりにも大きなアレ。電柱よりも、大きくなるんっすよ。
それでウルボロスを倒したけど、俺が思ったのは知らずに女の子に使っていたら殺してまうわクソ野郎、という事であった。
こんな狂気に満ちたスキルだと思わなかった。
このスキルを女の子に使っていたら、と想像しただけでゾッとする。
っで、俺は主に向かって、『バイアグラ』を使った。
俺の下半身から電柱サイズのアレが伸び、子どもを食べようとしていた主の口をアレが貫いて、主の後頭部から俺のアレが飛び出した。
ブッシューーーと溢れ出す主の血。
俺はすぐさま『バイアグラ』のスキルを解除。
アレをすぐに隠す。
一瞬の早業だった。
1人だけ生き残った子どもの元へ行く。
「すー、すー、っすか?」
と歯抜けのハリーが子どもに尋ねた。
大丈夫っすか? と尋ねているのだ。
「大丈夫か?」と俺が尋ねる。
怯える獣人の子をデッキが抱きしめた。
「もう大丈夫ニャー。もう心配する事がないニャー」
ミカエルは最高のシーンなのにも関わらず、動画を撮影していなかった。
スマホの画面をジッと見つめて固まっていた。
「どうしたんだ? ミカエル」
と俺が尋ねた。
「アニキ」とミカエルが泣きそうな顔をして、スマホの画面を俺に向けた。
『このチャンネルは不謹慎な映像を流すため、削除されました』
と文字が出ていた。
何を書かれているかわからず、俺は助かった子どもの頭を撫でる。
それからそれから生き残った獣人がいないか、俺達は確認する。
女性が5人ほど生き残っていただけで、後は死んでいた。
生き残った5人も傷を負っていたので、残った収益で治療ができるモノを買って、救急治療をほどこした。
それから死んだ獣人達をこのままにしていたら魔物もたかるので、火葬をした。
死体を燃やす火は燃え上がった。
生き残った唯一の子どもはデッキと一緒に村に戻っていた。
デッキの目的の場所には来れたのだ。
俺は燃え上がる炎を見つめて、頭を抱えた。
終わった。終わった。
あれか? あの攻撃のせいでバンされたのか?
「すー、すー、すーっすね」
とハリーが言う。
「俺達の戦いはこれからっすね、とハリーは言ってますよ」
とミカエルが言う。
やんのかコラ、とオラついた咬ませ犬に転生した底辺配信者、獣人美少女に懐かれたり、勇者の剣に懐かれたりしながら異世界でバズる お小遣い月3万 @kikakutujimoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます