第12話 筋肉キモ太郎

 ネット通販で4500円のガスコンロとガスボンベのセットとフライパンをカートに入れた。調理するためには必要なのだ。

 調理器具は荷物になる。

 こうなるとアイテムボックスもほしい。


 報酬アプリでアイテムボックスの値段を確認する。

 10万円。

 全然、買えん。

 ありゃーした。



 っで、通販サイトに戻って安いバラ肉と焼肉のタレとキャベツを購入した。

 ご飯を買いたかったけど、鍋を買うだけのお金が無い。

 米、食いてえ。

 日本人のお米信仰は異常なのだ。

 米食いたい、と思った瞬間に、日本人の心が残っていることが嬉しくなる。

 ドデカアタマとして生まれ変わってから28年は経つ。誕生日もわからないので、だいたいそれぐらい経つ。もしかしたら、もう少し若いかもしれないし、もう少し歳をとっているかもしれない。

 転生者だけど心も体も全てがドデカアタマになっていると思っていた。

 だけど日本人の米を食いたい、という気持ちが残っていて嬉しい。

 


 米を炊く鍋を買うなら、やっぱりアイテムボックスも必要だろう。調理器具はかさばるのだ。鍋だけではなく、包丁やら色んな物もほしい。

 当分の目標はアイテムボックス&炊飯専用の鍋を買って米を食う事である。

 全部含めて12万円な〜り。


 今は米を諦めて201円の食パンをカートに入れて、そして確定を押した。

 目の前にドサっと大手通販サイトのダンボールが現れた。


「おぉー」とミカエルとハリーが驚いた。

 獣人の女の子もチラッとだけ、コチラを見た。

「アニキは異世界のモノを、この板を使って購入する事ができるんだ」とミカエルが女の子に説明した。

 

 彼女は下を向いて反応が無い。


「何を購入したんっすか?」

 とハリーが尋ねた。

「食べ物」と俺が言う。

「コレも見せ物になるんじゃないっすか?」

 とハリーが言う。

 なんねぇーよ、と俺は言いそうになったけど、言うのをやめた。

 その代わり、「なんで見せ物になると思うんだ?」と俺は尋ねた。

「3代欲求って知ってるっすか?」とハリーが尋ねた。

「バカにすんじゃねぇ」と俺が言う。

「バカにしてないっすよ。3代欲求はみんなの興味を引くっす。それに今日の配信のエピローグもお客さんは知りたいと思ってるっす。間違ってたらすみません」

 たしかに動画サイト内に料理のコンテンツはあった。

 それを動画も見た事がない彼が食事は人の興味を引く、と言い当てているだけでも凄いと思う。

 エピローグに関しては、よくわからん。だけど投げ銭してくれた人にお礼は言いたかった。


「配信しよう」と俺が言う。

「それと昨日俺がやってた編集作業もハリーには教えるから後でやってみろ」

「あーっす」とハリーが頭を下げた。

「頑張るっす」


 ミカエルが手を差し出して来た。

 ???

「俺が撮影の係じゃないんですか?」

 とミカエル。

「あぁ、そうなんだ」

 と俺は言って、スマホを渡した。


「俺の顔がスマホを操作する鍵になってるんだ」と俺は言って、ミカエルが持つスマホを覗き込んだ。

 ホーム画面が開く。

「このアプリをタップして」

「アプリ? タップ?」

「ココを触って」

「はい」

「それでココを触って、ココを触ったら配信がスタートするから」

「はい」


 ちゃんと配信スタートするのを確認してから、俺はスマホの前に立った。

「どうもドデカアタマです」

「アニキ、ちゃんと自分のことをわかりやすく自己紹介した方がいいっすよ」とハリーから指摘を受ける。

「異世界転生したのに最底辺。スキルも無いし金も無い。仕方が無いので盗賊やっております。ドデカアタマです」

 と俺が言うとハリーが拍手する。


「今から皆様から頂いたお金でご飯を作っていきたいと思います」


「ちょちょちょ」とミカエルがスマホの画面を見ながら驚いている。

「どうしたんだ?」と俺が尋ねる。

「異世界の文字が読めるようになってます」

 とミカエルが言った。

「スマホの文字が読めるようにスキルを獲得しといたんだよ」

 と俺が言う。

 ハリーがスマホを覗き込んだ。

「コッチの世界の文字も読めないのに、異世界の文字が読めるって変な感じっすね」

 とハリーが言う。

「なんて書いてんだ?」

「戸◯呂兄弟の弟の配信が始まった」

 とミカエルが読み上げる。

「戸◯呂兄弟ってなんっすか?」とハリーが尋ねた。

 漫画だよ、と言ってもコッチに漫画が無いので伝わらない。

「有名なマッチョだよ。それに俺が似てるんだろう」


「マッチョ50%になって」とミカエルが文字を読みあげる。

「アニキ、求められてるっすよ」とハリーが言う。

「仕方がねぇーな」

 筋肉強化。

 モリモリモリ。

「キモフィス。キモフィス」

 とミカエルがコメントを読みあげる。

「キモフィスってなんっすか?」とハリー。

「気持ち悪いって事じゃないか」と俺が言う。

「60%になって」とミカエルがコメントを読みあげる。

 俺は、さらに筋肉強化をする。

「筋肉キモ太郎」とミカエルがコメントを読み上げる。

「筋肉キモ太郎ってなんっすか?」とハリー。

「気持ち悪いって事じゃないか」と俺が言う。

「80%になって」とミカエルがコメントを読みあげる。

「もういいよ」と俺が言う。

「筋肉モリオ頼む」とミカエルがコメントを読み上げる。

「わかった。それじゃあ一気に100%まで筋肉強化するぞ」

「そんな事いいから、早く料理を作れ」

 とミカエルがコメントを読み上げる。

「どないやねん」と俺はエセ関西弁でツッコんだ。


「アニキ100%を見せた後に料理を作るっす」とハリーの指示が飛んで来た。

 アニキ100%って、そんな芸人いたような気がする。

「それとミカエルアニキは投げ銭してくれたお客さんのコメントだけ読むっす」

 とハリーが言う。

「なんで?」とミカエルは尋ねた。

「お金を払った人と払ってない人の差別化を図りたいっす」とハリーが言う。

 それで差別化されるかどうかわからん。だけどコメントをずっと読まれていたら前に進まん。だから賛成だった。


 100%になってから筋肉強化を止めて、料理に取り掛かった。














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 そして『家出少女を拾ったので部屋に連れて帰って一緒に寝たら、その子は魔王の娘で俺はチート能力を無駄遣いしているおっさん勇者だったけど、女の子が懐いてきたのでバカップルになる。そんなことより彼女がクソカワイイ』という作品も同時連載しておりますので、もしよろしければソチラの方も読んでいただければ嬉しいです。

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