第3話 VS勇者
「お前はなんなの?」と青年に尋ねられた。
青年は今まさに勇者である事が発覚したばかりである。
彼は明らかに怒っていた。
俺に憎悪を向けていた。
強さを知っているので憎悪を向けらたらオシッコが漏れそうだった。
「実は私も転生者です」
と俺は咄嗟に言った。
転生者だとバラす気はなかったけど、憎悪を向けらて日和ったのだ。
「てんせいしゃ? 何言ってんだコイツ」
と勇者が言った。
えっ?
俺の時間が止まる。
この勇者は現地人なのか?
「知ってるか?」と勇者が聖女に尋ねた。
「知るわけないでしゃ、そんなの」と女性が言った。
そういえば転生者をバラすバラさない以前にスマホを見てもリアクションを取っていない時点で、現地人である事は察するべきだった。
「お前」と青年は俺の顔を睨んで言った。
「さっき馬車を襲っていた奴だよな?」
「違います」と俺は言った。
怖すぎて下半身がフワフワしていた。
中学時代にヤンキーに絡まれた時の恐怖を思い出す。
「絶対そうだよ」と勇者が嘲笑った。
「違います。双子の兄弟なのかな?」と俺が言う。
はぁ、と青年は溜息をついて俺を睨んだ。完全に自分の事を強いと確信しているヤンキーである。
「コイツ、ボコっていい?」と勇者が聖女に尋ねた。
ダメだと言ってくれ、と俺は心の底から思った。
「早くしてよね。冒険者登録して、さっさと旅に出たいんだから」と聖女が言った。
ガーン。
ボコられるの決定。
「店出ろよ」と勇者が言った。
「嫌です」と俺が言う。
「アニキ」と不安そうに2人の弟分が俺を呼んだ。
「ココでボコられたいの?」
と勇者が尋ねた。
俺は2人の弟分を見た。
コレ以上、カッコ悪い姿は見せられねぇ。
「わかりました。店から出ましょう」と俺は言って店を出た。
俺は壁を背にしていた。
勇者が俺の腹を殴った。
死ぬほど痛い。気絶してしまいそう。泣きそう。
そんな状況で俺はあることを思い出していた。
広告収入を得るためにはハードルがあるんじゃなかったけ? たしか俺がやっていた頃にはチャンネル登録者1000人と1万再生以上だったような? それを超えなければ広告はつけられてないんじゃなかったけ?
お金を手に入れられなければ充電器を買うことはできない。
インカメラには俺が泣きそうになって勇者にボコられている姿が映っていた。
「お前、ナイフをペロペロしてたよな? アレしろよ」と勇者が言った。
「もう勘弁してください。充分、殴ったじゃないですか?」と俺。
「はぁ? 軽くお腹を撫でただけだろう? 本気で殴ってやろうか?」
「わかりました」と半泣きで俺が言う。
「お前みたいな社会のゴミは本当は殺したいんだぜ」
「殺すとか、そんなのは違うじゃないですか」
「早くナイフを舐めろよ」
泣きながら俺はナイフを舐めた。
「それ美味しいの?」と勇者が尋ねた。
「美味しくないです」と俺が言う。
「もっと美味しくしてやるよ」と勇者に言われて、舐めていたナイフを口に入れられて、頬の肉を切られた。
右側の唇だけ口裂け女になる。
そして俺は勇者に思いっきり頬を殴られた。意識が飛ぶ。
生配信を消さなくちゃ、バッテリーの充電の減りが早い。
そう思いながらも生配信を消せずに俺は意識を失ってしまった。
「アニキー」
「アニキ」
「アニキ」
「アニキ」
と2人の泣き声が聞こえて、俺は起き上がった。
「アニキ」
「生きてた」
「よかった」
と2人が泣きながら俺にしがみついて来る。
「どれぐらい寝てた?」
と俺は尋ねた。
「すごい長い時間」とミカエルが泣きながら答えた。
口から出た血が固まっている。
「スマホ」と俺は叫んで、地面に落ちていたスマホを手に取った。
まだ生配信が続いている。
バッテリーは1%になっていた。
完全に詰んだ。
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そして『家出少女を拾ったので部屋に連れて帰って一緒に寝たら、その子は魔王の娘で俺はチート能力を無駄遣いしているおっさん勇者だったけど、女の子が懐いてきたのでバカップルになる。そんなことより彼女がクソカワイイ』という作品も同時連載しておりますので、もしよろしければソチラの方も読んでいただければ嬉しいです。
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