邪魔だから
「
「
ヴィルが魔法を唱えると手に構築された魔法陣から俺が飲み込まれる大きさの火炎放射が射出された
俺は等身大以上の大きさの火炎放射を吸収し、無効化する
「私の魔法が効いていない……!?」
「邪魔なんだよ……!!」
ヴィルは魔法が俺に当たったと思っており、立っている俺を見て目を丸くしていた
ヴィルの攻撃は当たっていない。俺に当たる直前で吸収されている
相手からしてみれば吸収されているとは思わない
俺が再びにらみつけると怯まなかったヴィルが息をのんだ
パチン「やりなさい!」
「
「死ねぇぇぇ!!!」
ヴィルが切羽詰まった様子で指を鳴らし、部下に命令する
部下たちはヴィルの合図で一斉に襲いかかってくる
遠距離からは魔法、数人は懐から小刀を取り出し一気に距離を詰めてくる
遠距離からも近距離からも攻撃か。数を生かした攻撃。よく教育されている
アルベルは攻撃が来ているにも関わらず、相手の戦法に感心していた
「「「凍結世界」」」
「氷が……!!あなたたち!!」
アルベルが魔法を唱えると辺り一面が氷漬けにされた。周りの木々も凍り、地面もスケート場のように凍っている
アルベルに迫った部下たちは氷漬けにされ、遠くにいる部下も地面が凍り、その冷気で足が凍っている。足が凍った部下たちは動くことが出来ないこと、アルベルの強さに恐怖を抱き、恐怖心に心身を支配されている。凍らなかったのはアルベルと距離を取っていたヴィルのみ
ヴィルは強いと自負する部下が一瞬でやられたこと、辺り一面を氷漬けにするアルベルの魔法の威力に戦々恐々とした
「帰ってくれる?そしたらこれ以上何もしない。あとこれから近寄るのやめてね」
アルベルは近くで氷漬けにされている部下を押して、ヴィルの元へ滑らせる
ヴィルは滑ってきた部下たちを大事に受け止める。1人1人呼びかけるが応答はない
ヴィルは面倒くさそうな表情を浮かべているアルベルをにらみつける
「私の可愛い部下をこんな目に遭わせて……ただじゃおかない!!!!」
「逆に火がついたか……面倒くさ」
アルベルは怒りの視線を向けてくるヴィルにため息をつき、面倒くさそうな表情で頭をかいた
全員動揺してるから帰ってくれると思ったけど、逆にやる気になったか
めんどくせぇー辺り氷漬けにしちゃったし、これ以上被害を広げたくないんだけど……
「殺してやる!!」
「はぁ……だるい」
「「
ヴィルが怒りの表情でアルベルに魔法を放つ。自身の怒りや憎しみを魔法に全て乗せた
ヴィルから放たれた火炎放射は赤黒い輝きを放ち、うねりながらアルベルを燃やし尽くそうと迫ってくる
「
アルベルは迫ってくる獄炎に面倒くさそうな表情を1つも崩さずに手を前に出して魔法を唱えた。アルベルの前に青い壁が構築される
赤黒い火炎放射は青い壁に弾き返され、方向を変えてヴィルの元へ向かっていく
「嘘!?魔法が返ってきた!!?」
ヴィルは方向を変えて迫ってくる獄炎に驚きを隠せなかった
ヴィルはとっさに動き、獄炎を躱す
反撃しようとアルベルの方を見るが、そこにアルベルはいなかった
「どこに……?」
「
「後ろ……!?足が……凍ってる……!!」(※
ヴィルは魔法を唱える声がして後ろを振り返るとアルベルが冷酷な視線を向けて立っていた
ヴィルはとっさにアルベルとの距離を取ろうとしたが、アルベルの魔法により地面が凍っており、冷気で足が凍ってしまっていた
距離を取ろうにも身動きが取れず、ヴィルは焦りをにじませた表情を浮かべた
「死ぬか、帰るか。選んでいいよ。俺もあんまり頻繁に人殺ししたくないし。ただ、帰るならこれ以上俺の家に近づくこと、俺に関わることは無しね」
「な……!!」
「ほら、早く選んで。俺も暇じゃないから」
アルベルは身動きが取れないヴィルにとどめを刺そうとはせず、生殺与奪の権を放棄した
アルベルはヴィルにヴィル自身の運命を委ねさせた
ヴィルはアルベルの発言に面食らった
「侮辱する気?」
「はぁ……よくこの状況下でそんなこと言えるね。そんなのどうでもいいから早く選んで。死ぬか、帰るか」
「どうでもいい……!?」
ヴィルは盗賊団の長としてのプライド・誇りを持っているためアルベルの発言に怒りを覚えた
相手に生殺与奪の権利を握られているのに、その相手が生きるか死ぬかを選べと言ってきている
負けたのに生かされて帰る侮辱を味わうか、負けて自ら殺される屈辱を味わうか
そのどちらもヴィルにとって受け入れがたいもの。それにアルベルが本当に生きて帰すとは信じていない。そのためヴィルは身動きが取れず、いつ殺されてもおかしくない状況でも反抗する視線をアルベルに向けている
アルベルにとってみれば、負け犬の遠吠えのようにしか感じない
「選ばないなら殺すよ?生きたいんだったら帰ったら?それとも、俺が嘘ついてると思ってる?帰すって言っておいて殺すんじゃないかって思ってる?」
「…………」
「この先何もしないって約束してくれれば生きて帰すよ。嘘は無い」
「…………」
「沈黙か。その反抗しますって視線といい、ガキかよ」
「貴様……!!」
アルベルは生死の選択せず、反抗的な視線を向けてくるヴィルに少し怒りをにじませる
アルベルの発言でヴィルは態度を豹変させ、殺気をこめた視線をアルベルに送る
もういいや。このままだと時間の無駄だし殺るか
ハンちゃんの餌にでもしようかな
「貴様ぁぁ!!よくもヴィル様を!!」
「なんだよ……次は」
アルベルがハンちゃんを呼ぼうとした時、後ろから何者かが剣で切りかかってきた
アルベルは死角からの攻撃を
アルベルがヴィルの方を見ると剣を持ち、ものすごい剣幕でにらんでくる男が立っていた
面倒くさそうなのがまた出てきた……
ヴィルのこと様呼びしてたな。部下か?
「ヴィル様、ご無事ですか!?今、動けるようにします!!
「私は大丈夫。それよりもあいつと戦ってはいけない。いくらフェルでも死んでしまう」
(※フェルは赤誠盗賊団の副棟梁。組織のNo.2。赤誠盗賊団の中で一番ヴィルに対して忠誠を誓っており、信頼している。そんなフェルをヴィルも信頼しており、上下関係はあるものの固い絆がある)
「ヴィル様をこんな目に遭わせた奴を野放しにしろと?」
「また今度よ。部下たちもボロボロ。まずは体制を整える」
「ですが……!!」
「フェル。我慢して」
フェルはすぐにヴィルの元に駆け寄り魔法を唱える。魔法により氷が溶けヴィルの足が自由になる
ヴィルは自分を侮辱されたことに怒りを覚えたが、助けが来たことで冷静になり帰る選択をした
本当はアルベルを殺したかったが、氷漬けにされた部下を助けるために帰ると決断した
フェルはヴィルの決断に納得がいかない様子だったが、ヴィルの訴えかける目に諭され、気持ちを押し殺した
「帰るならもう近づいて来ないでよ」
「生かしたこと後悔させる……!!」
アルベルが忠告するとヴィルは殺意のこもった視線を向けた
これ、また来るな。今のうちにとどめ刺しておくか?
また相手するの面倒くさいし……
「あなたたち。もう大丈夫。助けてあげるから」
アルベルが顎に手をついて考え込んでいる間にヴィルとフェルは足が凍って身動きが取れない部下たちの氷を溶かした
全身が氷漬けにされた部下たちは
「やっぱ、死んでもらおう。
「ヴィル様!逃げましょう!」
「えぇ!
アルベルは長考した後、殺すという判断をした。盗賊団たちに標準を合わせて魔法を唱える
アルベルの頭の真上に5mはあろうかという巨大な氷の槍が形成されていく
槍が完全な形状になるとロケットのように発射され、ヴィルたちの元へ猛スピードで向かっていく
氷の槍が形づくられていくと同時にヴィルは
氷の槍が当たる直前で転移し、アルベルの魔法が盗賊団のとどめを刺すことはなかった
氷の槍はスピードを落とすことなく木々に衝突し、衝突した木々を倒木させ、さらに冷気で凍結させた
盗賊団の戦闘でアルベルの家の付近は激闘の爪痕が残った
木々は倒れ地面にはヴィルが火炎放射を放った際に出来た焼き焦げた後があり、アルベルによって凍った場所も存在する
アルベルはそんな付近の惨状をみて、深くため息をついた
「逃げられたか……さすがに追うのは面倒だし、また来たら返り討ちにするか」
「ガウ!!」
「大丈夫。ハンちゃんを巻き込んだりはしないから」
「クゥーン!」
「この惨状は早く直さないとな……面倒事を残しやがって……次来たら消してやろう」
戦闘が終わったのを見計らってハンちゃんがアルベルに駆け寄っていく
アルベルが寄ってきたハンちゃんの頭を撫でるとハンちゃんは満足気な表情をした
アルベルは面倒事を残していった盗賊団に強い怒り、憎しみ、殺意を覚えた
俺はハンちゃんの満足気な表情を見て癒やされたが、目には怒りがこもっていた
――――――
〜魔法院〜
コンコン
「どうぞ。お入りください」
「失礼いたします。ハンス様、例の者を見つけました」
「そうですか……それで、一体誰でしたか?」
「この者です」
ハンスが自室で作業をしていると扉がノックされた
ハンスは作業をしている手を止め、訪問者を招き入れる。扉を開け入ってきたのはハンスの部下
部下はかしこまった態度で報告するとハンスの机にある人物が写った写真を置いた
「これは……消えた冒険者ですか?」
「はい。1年前に消えた冒険者、シュタイン・アルベルです」(※シュタインは名字。)
「なるほど……元1位なら禁断の魔術が使えるのも納得です」(※ハンスは冒険者アンチだが、上位ランカーの実力はかなりのものと認めている)
ハンスの机に置かれた写真に写っていたのは森を歩くアルベルの姿だった
ハンスはアルベルと面識があるわけでは無いが、前々から噂は聞いていた
どれほどの実力がアルベルにあるかは知らないが、冒険者ランク元1位なら禁断の魔術も扱えるだろうと勝手に納得した
「で、彼は今どこに?」
「魔物の森です」
「では、魔法院に丁重にお呼びください。客人として招き入れるのです」
「承知しました」
ハンスは怪しげな笑顔を浮かべて部下に命令する
部下は命令されると下げ、部屋を出ていった
ハンスは1人になっても怪しげな笑顔を浮かべていた。その目には渇望、悦楽が宿っていた
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