面倒
「さてと、邪魔が消えたことだしやることやりますか」
「ガウ!」
冒険者たちが消え、邪魔が無くなった
元気よく駆け寄ってきたハンちゃんの頭を撫でる
農作物の収穫の時期だ(※アルベルは魔法で野菜の成長を促進しているため無農薬で農業をしている)
たくさん穫れるといいな
俺は家の近くにある畑に向かった
「結構生えてるね。腕が鳴るってもんだ」
「ガウ!!」
今の畑にはコルタダンコ、コルタキャロル、コルタラデッシュ、コルタポタトが生えている
(※コルタ国で穫れるためその名がついている。コルタ国はアルベルの故郷。種を勝手に持ち出した)
俺は両手に手袋を装着して目の前に生えている植物たちを笑顔で見つめた
俺1人では時間がかかるのでハンちゃんにも手伝ってもらう
「まぁまぁ実ってる。でも、もうちょっとサイズがほしいな。改善の余地ありだな」
「クゥン!!」
俺が試しにダンコを抜いてみると立派に育ったダンコが抜けた。ダンコを収穫カゴに入れる
でも、ハンちゃんとかも食べるし出来るだけ大きい方がいい
俺1人なら十分なサイズだけど、これじゃあ家族の腹が満たされない
ハンちゃんも土をかいてダンコを掘り当てていた。ダイコンを見つけると元気よく鳴いて、ダンコを口に咥えて俺の方に持ってきた
俺はハンちゃんの口に咥えられたダンコを手に取り収穫カゴに入れる
まだまだたくさんある。大収穫になりそうだ
――――――
「ふぅー大収穫だね」
「クゥーン!!」
一通り実っているものを収穫した。また耕して種をまかないとな
でも、それはまた今度。今は大収穫となったことを喜びたい
野菜がパンパンに入った収穫カゴが5つもある
改善の余地はあるけど、こんなに収穫出来たのは初めてだ
「
パンパンに野菜が入った収穫カゴを5つまとめて運ぶのは無理なので、魔物を召喚して運んでもらう。レクススライムを3体呼び出して、収穫カゴを全部運んでもらう
(※レクススライムはスライムの中でも上位種で希少。他のスライムに比べ大きく、その分パワーが桁違い)
「一旦、そこに置いておいて」
ピチャン
俺が指示をするとレクススライムは了解と言った感じで跳ねた(※アルベルはレクススライムの言ってることは分かってない)
かわいい。魔物でもちゃんと見ればそれぞれに愛嬌があって可愛い
「頑張ったご褒美」
ピチャン! ピチャン! ピチャン!
俺はレクススライムたちにご褒美としてラデッシュをあげた
野菜をおいしそうに食べている。かわいい
(※スライムは自分の液体で溶かして餌を食べる)
「クゥン!」
「はいはい。ハンちゃんにもね」
ハンちゃんはレクススライムだけ食べている状況にヤキモチを焼いて、俺に欲しいとねだるようにすり寄ってきた
かわいい。ハンちゃんも収穫手伝ってもらったからな。ご褒美あげよう
俺がを大きいダンコあげると速攻でがっついて美味しそうに食べている
「まだまだいっぱいあるからな。今日は鍋とかにしようかな」
「クゥーン!」
「美味しかった?それなら良かった」
俺が今晩の献立を考えていると食べ終わったハンちゃんが元気よく寄ってきた
頭を撫でてあげると嬉しそうに目を細める。相変わらずかわいい
さてと、まずは朝食にするか。何も食べてないからお腹減った
せっかくだし収穫した野菜使おう
「今日は野菜づくし……」
「ガウガウ!!」
キッチンで料理をするため家の扉を開けると後ろに誰か立っているのを感じる
1人じゃない。10人、いや20人はいるか。大勢で何しにきた?面倒くさそうだな
ハンちゃんがいきり立って吠えている。ハンちゃんを面倒くさそうなことに巻き込むわけにはいかない
「ハンちゃん!おいで」
「クゥン!ガウ!」
俺は振り返って真っ先にハンちゃんを呼んだ
ハンちゃんが一直線に俺の元に向かってくる
ハンちゃんの頭を撫でても、ハンちゃんは嬉しそうな仕草は見せず、前に立っている人間たちを鋭い目で睨んでいる
前には予想通り20人規模の怪しげな集団がいた。先頭に立っているやつはフードで顔を半分隠している
「誰だ?」
「
「女性か」
「女で何か問題ですか?」
「いや。別に」
俺がにらみながら尋ねると、先頭に立っていた人間がフードを取った
フードを取って見えた素顔は女性。赤い瞳に赤い髪を持っている
丁寧な言い方だが、形だけだ。視線は冷酷で、突き刺すような視線を俺に向けている
こいつが盗賊団の棟梁か。なんで棟梁自らこんなところに?
あ、そういえばこの前交渉したいとか言ってきたやつがいたな
そいつの上司か。交渉したいなら自分で来いって言ったけど、まさか本当に自分の足で来るとは
律儀な盗賊団もいるんだな(本当は来なくて良い)
「今回は交渉をしに越させていただきました」
「交渉ね。前来たやつも言ってたな。言えば来るんだな」
「
ヴィルは小さく笑って言った
心あたりなんか無いが……?
「俺が?そんな優遇される覚えは無いけどね」
「あなたのような異次元の存在がいると我々の活動に支障をきたすので。あなたのせいで部下が何人もやられ、保安部隊に捕まっていますから」
「異次元の存在?俺が?人違いだろ。ここらへん盗賊団いっぱいあるし」
「えぇ。
「!!」
俺の名前を言われ、俺は眉を驚きでピクッと動かしてしまった
ヴィルは俺のささいな反応を見逃さず、ご満悦な表情を浮かべた
なんで知ってる?初対面だぞ?
ヴィルは俺がアルベルだと確信してるだろうが嘘を突き通そう
自分の部下に腕っぷしに自信があるんだな
「人違いだろ。俺はアインだ」(※アインという名はアルベルの親が名付ける時、アルベルかアインかの2択で迷ったという話を聞いて偽名を使う時はアインを使おうと決めていた)
「とぼけるのですか?」
「とぼけるも何も人違いだ」
「わずか2年で玉石混交の冒険者界の頂点に立ち、そして忽然と姿を消した幻の冒険者・アルベル。巷では忽然と姿を消したため死亡説やそんな冒険者はいなかったという存在否定説など様々な憶測が飛び交っています」
俺の存在否定説なんてあるの?それに死亡説とか
めちゃくちゃだな。元気に生きてるのに
(
「そんなやつ知らんな」
「あなたのおかげで我々が動きやすくなった。というのはありますから感謝はしています」
「知るか」
「まだとぼけますか?まぁいいでしょう。私としては交渉が出来ればそれでいいです。あなたがあのアルベルかどうかを確かめに来たわけじゃない。私はもう分かりましたけどね」
ヴィルは再び満悦そうな表情を浮かべる
さすがに苦しかったか。まぁ俺が一向にアルベルだって認めなければいいか
交渉の内容はなんだ?家を移動しろとかじゃないよな?
もしそれだったらこの場で全員ぶっ飛ばすか
「それで交渉ってのはなんだ?」
「先程も申し上げた通り、あなたのせいで我々の活動に支障が出ています。今後は私たちを攻撃しないで頂きたいんです。飲んで頂ければ私たちもあなたを攻撃することはしません。不可侵の誓いを結んでいただきたいのです」
攻撃しないって、俺から攻撃したこと一度も無いが?
そっちがやってくるから応戦してるだけだが?正当防衛だが?
そっちが攻撃してこなければ、こっちだって攻撃はしない
盗賊団とかどうでもいい。俺の生活を邪魔さえしなければ俺から危害は加えない
俺の邪魔してくるから危害を加えてるだけだ
「不可侵の誓いも何も、そっちが攻撃しなければいい話なんだが。俺から攻撃を仕掛けたことは一度も無い。お前らが襲ってくるから応戦してるだけで、正当防衛だ」
「それは今の話でしょう。今後、あなたから攻撃してくるという可能性も考えられる。あなたは元冒険者ましてやランク1位。こんな辺境に住んでいても、ギルドと繋がっている可能性は十二分にあります。そのギルドが盗賊団を一網打尽にするためにあなたを利用するという可能性もあるのです」
「いや、ないけど……」
「私の話は可能性に過ぎないです。ですが、リスクはない方がいい。ですから不可侵の誓いを結んでいただきたいのです。あなたのその言葉に信憑性があるわけでもないので」
そっちからしたら俺がギルドと繋がってるとか考えるのかもしれないけど……
ないからな。マジで関係断ってるし隠居してるから
そっちの言い分はわかったけど、そっちが攻撃してこなければいいだけの話だし、可能性の話も気のせいだからな
誓いを結ぶメリットがない。メリットのない誓いを結んでも意味ないし
「交渉は無しだ。そっちが攻撃しなければいいのと可能性の話は杞憂に終わるから。誓いを結んだ所で俺にメリットが無い」
「そうですか……残念です」
「交渉決裂だ。どこか行ってくれ」
「困りましたね……」
「何が?」
「それではあなたを殺さないといけなくなるでは無いですか」パチン!
ヴィルは交渉決裂しても動こうとはせずその場で立ち尽くしていた
そして、1つため息をついて俺の顔を見てくる。その顔がとても残念そうに見えた
ヴィルがため息をつくように言い、指を鳴らすと後ろに立っていた部下が襲ってきた
なんでそうなるかな?そっちの問題じゃんか
俺がいることでリスクがあるのはさっきの話で分かった。だとしても、なぜ襲う?
自分たちでどうにかすればいいだけの話だろ
「なぜそうなる?
「守護結界……流石ですね。腕は衰えてないみたいですね」
ヴィルの部下たちは攻撃が見えない壁に遮られ、全員目を丸くする
ヤバいと悟ったのか瞬時に俺との距離を取る
ヴィルは感心したような表情で俺を見てくる
面倒くさいことになったな。平穏に暮らしたいだけなのにな
「リスクは徹底的に排除すると決めているんです。あなたが我々を襲ってこなくても、ギルドと繋がっていなくても、あなたはいるだけで危険人物です。我々にどんな害が出るか分からない。なら、あなたを消すしかない」
「だから、そんなことしないって……」
「あなたが忽然と消えた理由、なぜこんな辺境に住んでいるのか。謎ばかりです。謎に包まれた人間の言う事を信じろと?」
(※アルベルの今を知る人間はいない)
「まぁ言われてみればそうだが……実際そんなことする気ないし」
これ何言っても信じてもらえないな
まぁ、言ってることは的を得てるけれども
「あなたの言葉には信憑性がありません。未知な存在で異次元の強さ。排除するに決まっているでしょう」
「なるほど。徹底的だね。俺が嘘をついていないって可能性すら排除するんだな」
「はい。ですから、ここで死んでください」
「無理。俺は平穏に暮らしたいだけだ。それを邪魔するなら……容赦しない……!!!!!」
ヴィルは殺意のこもった視線を俺に向け、魔法陣を手に構築する
ヴィルの赤い瞳がさらに赤く輝いていた
俺も殺意のこもった視線を盗賊団全員に向ける
ヴィル以外の盗賊団の人間は俺の視線に怯んだ
邪魔は徹底的に排除する
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