『父と子の炎』(1981年/火曜サスペンス劇場)
監督 田中登
脚本 長野洋
原作 小林久三
出演 若山富三郎、佐藤浩市、岸田今日子
交通機動隊の父に反発し、3億円事件を起こした不良少年。息子が犯人である事に気付いた父は職務との間で揺れ動く。
昭和の名優、若山富三郎とデビュー間もない佐藤浩市が激突! 3億円事件を題材にしているが、あくまで題材に過ぎず、時代設定も曖昧なものにしているため、どう見ても放映当時が舞台のドラマとなっている。おそらく家庭内暴力や校内暴力が社会問題化していた頃なので、そうした世相を反映しているのだろう。
そんなわけで、ミステリー要素は薄めだが、全編緊迫感あふれる作りで目が離せない。
特にエアコンがまだ一般家庭に普及していなかった時代の夏の暑さを強調した演出が息の詰まるような効果を発揮。佐藤浩市がエアコンのない車のダッシュボードにデカい氷の塊を置き、それをナイフで砕いて、かじるというシーンには驚いたが、昭和にはこんなワイルドな涼&水分の取り方をする人が本当にいたのだろうか?
青リンゴという未成熟のメタファーを随所に配しているのも印象に残る。
そんな本作の見どころは前述した若山VS佐藤の熱演で、これにより作品の温度は令和の酷暑レベルに上昇!
若山富三郎は東映作品などで見せる荒々しさや貫禄を抑え、枯れたテイストを前面に出し、父親の悲哀と苦悩を見事に表現。とはいえ、怒れば手の出る昭和のオヤジ、佐藤との乱闘シーンでは、さらりとチョークスリーパーを決めるあたり、さすが殺陣の名手。
一方の佐藤浩市は若さゆえのギラつきやワイルドさで、若山や母親役の岸田今日子といったベテラン勢と渡り合い、同時に反抗期特有の繊細さを表現し、キャラクターに善人とも悪人とも取れない幅を持たせている。
若山との絡みはどうしても実父、三國連太郎との関係を想起させるが、うがち過ぎだろうか。
クライマックスからラストにかけての展開は、かなり評価の分れるところで、個人的には「ええっ、これで本当にいいの?」と思ってしまったが、これもやはり当時の世相や前年に起こったある事件を反映しているように思える。当時の視聴者にはどのように映ったのだろうか。
若かりし日の佐藤浩市が出演した火サス作品といえば、こんな作品も。
『危機一髪の女』
https://kakuyomu.jp/works/16817330663537267590/episodes/16818093081827054239
面白い2時間サスペンスを見た! しおまねき @aya2050
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