『火の坂道』(1983年/土曜ワイド劇場)
監督 須川栄三
脚本 猪又憲吾
原作 小林久三
出演 近藤正臣、岡江久美子、仲谷昇、中村れい子
サブタイトルを含んだタイトルは『火の坂道 乳母車はいつも5分前に通る 妻と別れて、あの女と…』。
倦怠期を迎えた夫婦が、それぞれ別の男女に想いを寄せたことから、殺人事件に巻き込まれる。
主人公の近藤正臣が事件の真相に迫る謎解き要素もあるが、そこはメインではなく、描かれるのは夫婦間のすれ違いと関係性。近藤は通勤途中の坂道で見かける女性に惹かれていき、妻の岡江久美子は同僚の医師(既婚者)から結婚を申し込まれる。
それぞれが相手に抱いた想いは恋愛感情か、それとも単なる逃避か? ふたりはそのまま不倫に走ってしまうのか? これがシャープな演出によりサスペンスフルに描かれ、ミステリードラマの定石とも違うため、先の読めない面白さがある。
夫婦が新たな出会いに対して、お互いをけん制しつつ、高揚感が隠し切れない様をスプリットスクリーンで描いたシーンは印象的だ。
しかし、ラストは正直拍子抜け。どんな修羅場が待っているのかと期待したのに……。夫婦喧嘩は犬も食わないとは、まさにこのこと。
あ、それがテーマなのか!?
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