第15話 閑話 闇の眠りの目覚め

 光が全く入らない暗闇。それは目を開けているのか、閉じているのか、それすらわからない。窓はもちろん壁の隙間すらない密室。

 常人では全く見えないその部屋には、上等の大きなベッドが置かれている。寝心地の良いベッドには、小さく体を丸める子供と、その子供を守るように抱きしめる青年が眠っていた。二人の寝息が、耳鳴りがするほどの静寂の中で唯一の音として聞こえる。

 刹那、波のない暗く深い水面に岩が落とされたような感覚に、青年は重い瞼をゆっくりと開けた。

 青年は自分の腕の中で健やかに眠る子供の頭を優しく撫で、起こさないようにゆっくりベッドから降りた。頭を掻きながら真っ暗闇の中を物ともせず青年はベッド脇に投げていた白いローブを掴んで、暗闇に溶けるようにその姿を消した。


 魔王が封印されたことはここ周辺では有名な話で、それも封印されて数年は経っている。それでも魔王討伐という大義名分を片手に好き放題に暴れる勘違いした者が絶えない。

 魔王封印を知っている帝国が取り締まりをするもその数の多さに手を焼いているとも聞く。

「ああ、面倒な場所まで来ちゃったな」

 そして当の封印された魔王の半身は、自分たちの封印という名の眠りを妨げる要因を感知してそれを排除すべく山の中を歩いている。

 今では魔王の半身として魔王と一緒に眠りについている青年だが、この山にはかつて青年が裏切った魔王討伐の仲間が住んでいる。眠りの邪魔者を消すことが目的だったが、かつての仲間を害するなら確実に仕留めるべきだと青年は白いローブのフードを目深に被った。

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