第10話 二週目

 今度の魔王討伐のメンバーはギルバートの他に三人。


「好きなだけ武器も防具も使って良いというのは気が楽でいいな! しかも戦闘中でも補充してくれるなんて最高だ! 荷物を持たなくていいのもだ! ギルバートは有能だな!」

 王国騎士団で副団長を務めている、斧や大剣といった武器を好み、筋肉の鎧をまとう豪快なガトン。


「でも戦える武器商人なんて珍しいですよね。身のこなしも身軽で……さては昔はどこかの国の騎士団に所属していましたね!? アイリわかっちゃいました!」

 同じく王国騎士団の隊士であり、この中で一番小柄ながらも双剣の斬撃の速さは一級品。だがまだ幼さの残るアイリ。


「………………そうですね」

 そして最後の一人は、勇者だったパリスの実の妹であるピリカ。

 占いを得意としており、王国では天気を占うなどして重宝されていた。今回は魔王討伐の戦力というよりは、サポートの為に連れてこられたらしい。アイリと同じくらいの歳のようだが、その落ち着きようは成人した淑女のようだ。


 ギルバートは商人としての笑顔の仮面をつけていた。

「ああ、忘れないうちに──アイリ、国王が勇者の剣は君が使うべきだって」

 そう言われて手に握らされた細身の剣にアイリは目を輝かせた。

「これが……! すごく軽い! ギルバート、この剣に合わせやすい短剣はあありますか!? 細身だけどバランスを考えたらもう片方は短剣の方がいいから」

 興奮するアイリの依頼に、ギルバートは考えるように口を片手で押さえながら視線を斜め下に流した。そして商人の笑顔で答えた。

「時間はかかるけど用意はできるよ。なんたって勇者の剣だからね、その対になる短剣は厳選させてもらうよ」

「…………」

「本当!? 楽しみにしてます! 勇者の剣があればアイリ無敵!」

「そうだね。勇者の加護があるかもしれないね」

 純粋に喜んで飛び跳ねるアイリと、それを微笑ましく見守るギルバート。その陽気な空気にあてられて豪快に笑いだすガトン。

 その全てを、ピリカは冷ややかな目で見ていた。 

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