03詳細
部屋の中は綺麗とは言えず、ゴミが大量に入っているゴミ袋がそのまま放置されていたり、食べた容器がそのままになっていたりしていた。
「うわぁ、汚いなぁ。客が来る事ぐらい分かってたんだし、ちょっとぐらい片付けておかないの?」
そう言うと浅谷先生は不機嫌な表情を見せた。
「すみません……片付ける時間がなかったので……」
「はぁ、勘弁してよ」
「まあまあ、いいじゃないですか」
俺は先生をこれ以感情を昂らせないよう宥めた。
「西村さん、じゃあ話してもらえますか。詳細を」
「……分かりました」
そう言うと、西村さんは話始めた。
「数週間前、壁から変な物音したんですよ。他の部屋の住人の音かな? って最初は思って無視をしていたんですけど、日に日に音が大きくなってきたので、隣の部屋に苦情しに行こうと思ったんですがその時、思い出したんですよ……私の部屋の隣は誰も住んでいないことに」
「へーそれは怖いねー」と浅谷先生は興味なさそうに相槌を打った。いや、今回の目的はその調査なんだから真面目に聞いてあげろよ。
「恐怖を感じた私はすぐにどうにかしてくれる人は居ないかとパソコンで調べていた所で……」
「それでこの私が引き受けたってわけさ」と浅谷先生は西村さんが話しているにも関わらず、胸を張って言った。
「………………」
「………………」
「? ――何で二人共黙るのさ」
改めて、先生の空気の読めなさが分かった。
「何だいこの空気読んで下さいって言う目は。空気は読むもんじゃなくて、吸うもんだろ? この後の話は大体予想が付くし、時間も無いから省いてあげたんだよ」
何で上から目線何だよ……
「えっと、その……そういうわけでお願いします」
西村さんはぎこちない感じで、話を終わらした。
しかし俺には一つ疑問が残った。
「あの、すみません」
「はい、何ですか?」
「ここを西村さんはここを事故物件だと知ってここに住んでいるんですよね?」
「……えぇ、そうですね」
「なら、ここから退居すれば良い話なんじゃないんですか?」
「それは……」
「それはお門違いだと思うけどね」と西村さんが答えにくそうにしている所に先生は話を割って入ってきた。
「なんてったって依頼人はこの部屋の調査を希望してるんだから。つまりまだこの部屋に住む気がある。それを言っちゃあ、おしまいだよ」
「でもそっちのほうが絶対良いじゃないですか」
それにこの先生にいくら払ってたか知らないが、確実に引っ越した方が安かっただろう。
「だーかーらーそう言うのはいいって依頼人が言ってるから良いんだよ」
俺は西村さんに尋ねた。
「……そうなんですか?」
「……えぇ、申し訳ないのですが私はこの部屋から引っ越す気はありません」
「そうですか」
何なんだ、この人? どう考えても可笑しいだろ。そして浅谷先生は浅谷先生だ。何でこの可笑さに気付かない? この人なら直ぐに気付くはずなのに……
「それじゃあ時間もない事だし、じゃあさっさと始めるよ」
「……分かりましたよ」
こうして、俺達の調査は始まった。
化学教師・浅谷棚夏の無理難題 佐藤寒暖差 @SatoKandansa
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