第38話 ヤンデレ幼馴染の暴走

 時間を忘れて甘い一時を過ごした。

 気づけば日が暮れてはじめていた。


「もうこんな時間だね」

「気づかなかったよ、ごめん」

「ううん、いいの。赤くんと一緒なら楽しいから」


 あれからキスをしたり、触れ合ったりして過ごしていた。藍と二人きりで過ごす時間は幸せ過ぎて時間を忘れてしまう。


 しかも、これから夕食も作ってくれるという。楽しみしかない!


「俺もなにか手伝おうか」

「大丈夫。リビングでゆっくりしていて」


 そう言われても手伝いたかったが、スマホが鳴った。机に置いてあるスマホを覗き込むと、そこには『都』の名前が見えた。……そういえば完全に忘れていた。


 中身を見てみると――。



 都:心配なので今、兄さんの家の前にいます



 なっ……今いるのかよ。

 そうだな、今日は学校へ行っていないし、都の連絡もずっと無視していた。心配されるのも分かる。けど今は藍と二人きり。この状況をどう説明したものか。



 都:まさか藍ちゃんと一緒にいるんですか? 朝からいませんよね……



 さすがに察するよな。

 ええい、仕方ない。

 事情を説明しておくか。


 俺は玄関へ向かい、おそるおそる扉を開けた。



「……や、やあ。都」

「兄さん! やっぱり家にいたんですね!」

「すまん。朝から事件に巻き込まれた」

「じ、事件って! また何かあったんです!?」


 驚く都は、心配そうな表情をしながらも俺の手を握る。


「ああ……茂木の兄貴が刑事に化けていた。襲われたんだ」

「うそ……そんな! お怪我とか」

「大丈夫だ。幸い、擦りむいた程度の軽傷。俺も藍も無事だ」

「そうだったんですね。藍ちゃんも巻き込まれたんですね」

「そうだ。今は……」

「兄さんの家にいるんですね」


 早くもバレたか。これはもう隠し通せない。というか、玄関の靴ですぐに分かる。


「今日、あんなことがったからな」

「分かりました。でも、私だって兄さんが心配です!」

「ありがとう、都。嬉しいよ」


 お礼を言うと、都は抱きついてきた。良い匂いがして俺は頭がクラクラした。……こ、これは想定外すぎる。


「……今日はずっと兄さんと会えなかったので寂しかったんです」


 都は弱々しい口調で言った。

 そんな小さくなられると俺は弱いのだが……。


「そうだったのか。すまんな」

「その……兄さん、私に身を委ねてください」


 キョトンとする俺。何事かと見守っていると、都はその場に腰を下ろし、俺のズボンのベルトに手を掛けた。カチャカチャと世話しなく外し、ズボンを下ろそうと――って、これはマズイ!!


「ちょ、都! こんな玄関前で!!」

「兄さんの兄さんを癒したいんです」


 俺の俺ってナニ!?

 どういうこと!!

 いや……分かってはいるけど、突然のことで頭が真っ白になった。



「お、落ち着け都。そういうのは付き合ってからじゃないと……」

「幼馴染なので大丈夫です」



 なにが大丈夫なんだ!?

 いやぁ、まぁ……都が可愛いし、俺をすっごく思ってくれている。俺も都のことは好きだし、妹のようにも思っている。


 だけど、この気持ちはもう……。



「すまない、都……」

「気にしないでください。私は兄さんに満足してもらえるなら、それでいいんです……」


 顔を真っ赤にしながら、都は俺を襲ってくる。イカン、こんなところを藍に見られたら!



「ねえ、赤く~ん! 夕食できたよー! ……って、え?」



 タイミングの悪いことに、藍が来てしまった。振り向くと藍は、俺の股間あたりに顔を近づける都を凝視。それと俺の顔を信じられないような表情で見つめてきた。


 うそだろおおおおおお……!

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