第37話 甘いキス

 ハシゴを振り回した俺は、茂木兄を吹き飛ばすことに成功した。

 さすがの茂木兄も、この攻撃には想定外だったようで直撃。痛々しい音と共に道路へ投げ出された。


 直後、ホンモノの警察が登場。パトカーなどが複数台駆け付けた。どうやら、藍が隙を見て通報してくれたようだ。……助かった。


 茂木兄は直ぐに逮捕され、連行されていった。


 その後、俺はいろいろ話を聞かれた。



「大丈夫ですか? ケガとかないです?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございました」

「では、なにがあったかお話を聞きますね」



 事情を話し――結局俺と藍は遅刻というか、もう学校どころではなくなった。

 警察の方も茂木兄をマークはしていたようだった。

 まさか刑事になりすましていたとは警察も思わなかったようだ。


 半日後、俺と藍は解放された。

 部屋に戻り、藍と共にソファに腰掛けた。


「……ふぅ、疲れた」

「まさかお兄さんが現れるなんて」

「そうだな、藍。弟が捕まったから、俺たちを恨んでいたようだ」

「そんな、酷い……」


 まさか刑事に変装しているとは思わなかったけど。


「でも、なんとか撃退できたし、逮捕にも至った。これでもう狙われる心配はないさ」

「うん。赤くんが無事で良かったよ」


 手を握ってくる藍。

 俺は嬉しくて握り返した。


 そうだ。俺は約束通り藍を守ったんだ。それだけでも大きな成果と言えよう。


「いや、俺より藍だよ。無事でなにより」

「ありがとう。いつもありがとうね」


 嬉しそうに微笑む藍は、身を寄せてきた。俺は自然に藍を腕を回して抱くようにする。


「今更だけど学校サボってゆっくりしよう」

「賛成。どうせもう午後になっちゃうし、いいと思う」

「決まりだな」


 そんなわけで学校へ行かず、俺の家でゆっくりすることに。

 お茶も淹れようと立ち上がろうとすると、藍が俺の手を離さなかった。


「一緒にいて……」


 そんな風に求められ、俺は胸がキュンとした。

 また事件が起きて怖い思いをしたんだ。不安でたまらないんだろうな。


「分かった。もう少しくっついていよう」

「その方が助かる」


 藍は俺の手を握りながらも、顔を赤くしていた。俺もドキドキしてたまらなかった。



「藍……その、俺……」

「心臓の音、やばいね」

「ああ……死にそうなくらいに高鳴ってる」

「うん。けど、もっとドキドキしたい」


 そう言って俺の頬に触れてくる藍。まるでキスをしてくれと言わんばかりに視線を向け手きた。この甘い雰囲気に押され、俺はそっとキスをした。……してしまった。


「…………赤くん、ありがと。好き」

「……俺もだよ、藍」


 もう一度キスを交わしていく。

 それから何度も何度も――。

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