第35話 幼馴染の愛が重い
俺はさっそく自分のスキルを活かしてクレーンゲームで景品を次々に獲得していく。
素早く軽快に、しかし慎重に【←】と【↑】のボタンを操っていく。
大体数回プレイするだけで俺はフィギュアやぬいぐるみ、お菓子などゲットした。
「ちょ、赤くん……凄すぎない!?」
「兄さんにこんな特殊スキルがあったなんて、知りませんでした……」
藍も都も俺を尊敬の眼差しで見ていた。
そんな風に見られると照れるって。
二人に今までゲットした景品をプレゼントした。
「ほれ、受け取れ」
「いいの?」
「藍は、こういうクマのぬいぐるみが好きだよな」
「うん、ありがとう!」
嬉しそうに受け取る藍。その素敵な笑顔が見れて俺は嬉しい。
次に都にはフィギュアを渡す。異世界モノのキャラクターで女性エルフだ。
「これでいいか、都」
「Lv.1転生エルフさんのスローライフですね! この作品、海外でも有名ですよ~」
そういえば海外人気が高いと聞いたことがあった。都はアメリカでも見ていたらしい。なら、丁度良かったな。
さらに二人にお菓子を配分。
凄い量になってきた。
「もう十個は取れたな」
「凄いテクニックだね、赤くん。どうしてそんなに取れるの?」
「動画で学んだ。いろんな取り方があるんだよ。それを真似してみた」
「それでも凄いよ」
もちろん、取れそうな台を選んだりはしている。あとは腕と攻略方法次第だ。その結果、俺はたくさん取れた。
「よし、こんなところか。お金もそろそろヤバい」
「もう持ちきれませんよ、兄さん」
景品もかなり大量にゲットした。
いい時間にもなった。
そろそろクレーンゲームは終わろう。
出口へ向かい、精算機で精算を済ませた。数千円でここまで遊べるなら最高のゲームセンターだ。
外へ出るとすっかり日が沈んでいた。
「収穫は十分だ、帰ろう」
「うん、楽しかった!」
「私もです。こんなに獲れるなんて!」
ほとんどを藍と都にプレゼントした。
二人とも喜んでくれたし、がんばった甲斐はあったな。
帰路につき――家に到着。解散となった。
「じゃあね、赤くん!」
満足そうに帰っていく藍。もう少し話とかしたかったけど今日は十分遊べた。それに藍の精神面も多少ケア出来た。少しは気が晴れたはずだ。
最後まで見送り、俺も家へ戻ろうとしたのだが――。
「待ってください、兄さん」
「ど、どうした?」
「その……今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「ああ、俺もだよ」
都はホント、普通にしてくれている分には何も問題ないんだよな。
「それで、その、今度は二人きりで遊びに行きましょ」
「それは構わないけど」
「約束ですよ。絶対に二人きりで」
「分かった。その代わり、変な行動は慎むように」
「私のこれは兄さんを愛するがゆえです!」
そんな堂々と言われてもな!?
けど、多少は変わりつつあるし……一応、期待しておこう。
今日のところは解散となり、俺は家へ戻った。
――直後。
スマホがブルブルと震えた。なんだ、誰だ?
通知が山ほどきて俺は青ざめた。
都:好きです、兄さん
都:また私に笑顔を向けてくださいね
都:早く会いたいです
都:電話してもいいですか?
都:……寂しい、寂しい、寂しい
都:会いたい
以下、百通略。
どんだけ送ってくるんだよ、都のヤツ。まだ別れてたった三分だぞ! カップ麺じゃあるまいし、やめてくれいっ。
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