第33話 放課後デートの約束
なにやら気配を感じたような気がした。
けど直ぐに消えた。
う~ん……誰だろう、俺たちを見ていたヤツは。
グラウンドで遊ぶ人が多くなり、その気配を辿ることはできなかった。
やがて昼休みは終わり――教室へ。
相変わらず教室内は『木ノ原』のことで話題持ち切り。俺はいい加減に聞き飽きて、気にしないでいたのだが……。
「いきなり殺されたとか……ショックだよな」
「みんなからすればね」
そう、俺たちからしてみれば、かなり複雑な問題なのである。事情が事情なだけに……。けど、木ノ原の悪事の噂もなんとなく流れているようだった。
それどころか茂木や中田、平野のことさえも気づかれ始めていた。
「なんか最近事件多くね?」「てか、殺人とかやべーよな」「木ノ原先生、包丁で刺されたんだよね……」「ニュースになってた」「ネットでも大騒ぎだよ」「怖いね」「この学校、変なヤツ多いよなぁ」「私、不安になっちゃう」
みんな心配そうにしている。
そんな中、午後の授業の担任が教室に入ってきた。
あれは数学の
「静かにしろ。授業をはじめる」
先生の一声により、教室内は静まり返った。
だるい授業が始まった……。
◆
ただ静かに授業の時間は流れていく。
たまに視線を藍に向けると、向こうも気づいて俺の方を見て微笑む。
そして小さな声で藍はささやいたんだ。
「ねえ、赤くん。今日は放課後、どこかへ行こっか」
「いいね。この前は遊びに行けなかったし、今度こそ楽しもう」
「うん、約束だからね。他の女の子の誘いとか乗っちゃダメだから」
「そんなことしない。ていうか、いても都くらいだ」
自分で言って思い出した。
そういえば都がずいぶんと大人しい。
あれから姿を一度も現していない。
メッセージアプリにも返信すらなく、既読もない。どうしたんだ……? いったい、なにを企んでいるのやら。
いや、疑うわけではないけれど。ちょっとだけ勘ぐってしまう俺。
きっと何もないと信じたい。
そうして授業は終わり、いよいよ放課後。
約束の時がきた。
隣の席には藍が――いない!
……まてまて。
このパターン、どこかで。
嫌な予感がしていると同じクラスの女子が教えてくれた。
「紫藤くん、古森さんを探してるの?」
「あ、ああ……どこへ行ったか知ってるの?
「うん。さっき誰かに呼ばれていたよ」
「誰か?」
「う~ん、相手は分からない。男子だったかも」
ちょ……おい!
藍のヤツ、遊ぼうって誘っておいて……俺に釘を刺しておいてそれかよ。
信じてないわけではない。
でも、こんな放課後のタイミングそりゃないだろう。
いや、考えすぎか。
藍に限ってそんなことはない。
だが俺は過去のことをフラッシュバックして吐きそうになった。
まさか……まさかな。
教室を飛び出して、俺は廊下を走っていく。
途中、また話しかけられた。同じクラスの女子だ。確か、名前は大林さん。藍とは友達だったはず。
「あ、紫藤くん。古森ちゃんを探してるの~?」
「なんで分かる」
「だって二人ともいつも一緒に行動してるじゃん。付き合っているんでしょ? でも、さっきは別の男の子といたような。遠目だったけど多分、あれは古森ちゃんだったと思う」
「そ、それだ! どこへ行ったか教えてくれ!」
「この奥へ行ったよ。生徒会室だったかな~」
「生徒会室か! ありがとう!」
急いで生徒会室へ。
この先に藍が……む?
『……はぁ、はぁ』
『生徒会長……こんなところで……』
ちょ、おい……生徒会室から妙な声が漏れてるぞ。
これは明らかに男女がお楽しみ中なアレだ。
まさか、まさか、まさか……!!
信じたくない。こんな現実を!!
全身が震えながらも俺は扉を少しだけ開け、中を覗く……。
頼む、頼むから!
藍、お前じゃないと言ってくれ……!
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