第31話 地獄から天国へ
天国を味わった俺。
いつの間にか爆睡していたらしく――気づけば夜になっていた。
無論、藍と都の姿はなかった。
リビングを覗いてみたが、電気は真っ暗。どうやら帰ったようだ。
俺は天国気分が抜けないまま日常生活を送った。
……そして、時は過ぎ……久しぶりの登校日。その朝。
鼓膜を突くようなアラームが鳴り響く。
スマホのスピーカーから爆音が発せられ、俺を叩き起こした。……だる。
制服に着替え、朝食を食べて登校へ。
あれから不思議と藍と都の反応はなかった。まるで嵐前の静けさのように……いや、出来ればそうは思いたくはない。
きっとこれはそう、祭りの後の静けさなのだと。
外へ出ると、藍が待っていた。
「おはよ、赤くん」
「お、おう。待っていてくれたんだな」
「うん、まあね。赤くんの姿が見えたし」
ご近所さんだからな、カーテンをしないと窓から丸見えなんだよな。
「それじゃ、一緒に行くか」
「そうしよ。ちなみに、都は先に行っちゃった」
「なんか用事?」
「そうみたい。今日は手続きとかいろいろやるんだって」
そういえば、都はまだ日本に戻ってきたばかり。いろいろやることもあるんだろうな。
気にせず学校へ向かった。
今日の朝は妙に天気がよくて空気も澄んでいる。
あれから事件トラブルはない。
このまま何事もなく平和に暮らせるといいのだが――。
学校に到着して早々、他の人からジロジロ見られているような視線を感じた。
「なあ……藍」
「やっぱり見られてるよね」
「ああ……なんで?」
「最近の事件のせいじゃない? 平野くんに木ノ原先生、それに水泳部の二人とかいろいろあったし」
それしかないよなぁ……。
今や俺と藍、そして都は有名人ってわけか。ちっとも嬉しくねえ……!
少し歩き、昇降口で上履きに履き替え、廊下を歩いていると久しぶりに新月先生と出会った。白衣姿でぼうっとしながら、こちらを認識した。
「おはよう、赤くん。それに古森」
「「おはようございます」」
俺も藍も挨拶を返した。
「あれから、また事件があったようね」
「そうなんですよ。これまでの凶悪犯が襲い掛かってきて大変でした。殺人事件も起きちゃって……」
「木ノ原先生ね。残念だけど、彼もまた犯罪を犯していたようね」
「はい。あまり悪くは言いたくないですが、事実です」
「そうだね。
いくらなんでも一度に事件が起き過ぎた。警察のお世話になりすぎるほどに。
けど、悪いのはすべて犯罪者の方だ。
「学校、大丈夫ですかね」
心配そうに声を漏らす藍。
その回答を新月先生が答えた。
「しばらくは信頼できる先生たちが学校を見回るって言っていたし、大丈夫じゃないかな」
なるほど、それでしばらくは秩序が保たれるといいな。
新月先生と別れ、そのまま教室へ。
いつもの席へ座り、隣は藍が。
「ねえ、赤くん」
「ん? どうした、藍」
「今日、お弁当作ってきたからお昼一緒に食べようね」
「そりゃありがたい」
今日も俺は藍のありがたいお弁当を食べられるのか。それを聞けただけで最高な気分だ。
そうだ、こういう小さな幸せが続いていけばいい。誰も俺たちの邪魔をしないでくれ。頼むから……。
ほのぼのと学校生活が進んでいく。
何事ともなく。
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