第30話 幼馴染のマッサージ

 二人の練習は俺の圧倒的強さの前には無意味だった。

 結果、無双して俺は勝利を得たのだった。


「すまんな、二人とも」


 藍も都も真っ白になって呆然としていた。



「……うそ」

「そんな」



 勝利を収めたからには俺の望みが叶う。


「約束通り、二人には俺の望みを聞いてもらうぞ!」


 試合前、敗者はなんでもいうことを聞くということになった。こうなった以上、藍も都も俺の自由のままというわけだ。



「赤くん……!」

「兄さん……」



 二人ともちょっと期待と不安が入り混じっている。って、まて……思ったより、嫌そうな顔はしていないぞ!?


 むしろ望んでいる、みたいな。



「あの、二人とも……もう少し嫌がってもいいんだぞ?」



「別にいいかな。なにされても」


 藍は少し頬を赤くしながらも言った。いいのかよ。



「私もです。兄さんになら、その……物凄いことでもしちゃいます! されちゃいます!」



 どんなことだよ!?

 あぁ、もう二人とも意外とそっちをご所望か。だが、選ぶのは俺だ。選択権はすべて俺にある。



「ちなみに、望みは三回までだから!」

「おい、藍。それは七つ集めるアレかよ。でも、三回も使えるのか」

「うん、いいでしょ? さすがに無制限とか嫌だし」


 確かに一理ある。けど、都は無制限でもいいですよ敵な顔をしているけどな。


「私はどちらでも」


 やっぱりか。

 けどここは回数制限ありでいい。無制限ではキリがないし。



「分かった。三回までな。――それじゃ、さっそくだが」


「うん」

「分かりました」


 俺が言いかけると二人とも服に手を掛けていた。って、まて、気が早すぎだろ!



「ちょ! ストップ! ストップだ。まだ言ってないって」



「でも」

「そうですよ。どうせ、兄さんのことです。えっちなことでしょう」



 ……そりゃ、そうだけど。

 しかし、今ではない。

 最初にすべきことは決まっている。


「聞け、二人とも! 今後も仲良くいこう! それが俺の望みだ」



「……」

「……」



 藍も都も互いに見つめ合い、笑った。



「あはは、赤くん。それが最初の望みなの~」

「兄さん面白いです」



 想定外の反応に俺は驚いた。そして、恥ずかしくもなった。なんでこうなるッ!?

 俺はてっきり二人が不仲だと思っていたのに。それは気のせいだったのか……。


「おかしいかな」


 頬をぽりぽり掻いていると、都が答えてくれた。



「いいですか、兄さん。私も藍ちゃんも仲良いですよ。そうでなければ今日、ゲームなんてしていませんし」


「都の言うとおり。あたしも別に普通だよ」



「そ、それもそうか」



 そうだよな。幼馴染ってそういうものだよな。……忘れていた。

 まあ最近は事件だとか多すぎた。あと綾乃とは決別してしまったし、妙な不安があったのかもしれない。でも、こうして話すことによって、わだかまりのようなものが解消された。



「それじゃ、これで望みは一回消費だね」

「えっ、藍。今のはカウント!?」

「うん、残念だけど」



 うそだろ……!

 なんてこった。

 お互いの思いを確認できたから無駄ではなかったけど。


 となると、あと二回か。


 ここは慎重に望みを言うべきだな。



「それじゃ、えっと……う~ん」



 考えている間にも二人は服を脱ぎ始めた。って、そっち~!



「どうせ、でしょ?」

「もう脱ぐしかないですよね」



 準備は万端かっ!

 そりゃ嬉しいけど、三人で……ちょっと気まずいだろっ。


 だけど、せっかくのチャンスだ。


 ここは男の欲望のままに!



「……シてくれ」



 思い切って“小声”で俺は言った。

 すると二人とも覚悟を決めたかのように服を脱ぎ――下着姿に。それから、俺をベッドへ寝かせ、藍がひざまくらしてくれた。


 ……おぉ、良い眺めだ。


 都は俺にやや馬乗りになるような体勢で大人のマッサージを。



「いくよ、赤くん」

「あぁ……あとは頼む」

「うん、気持ち良く……してあげるからね」



 俺はついに藍と都とひとつになれるんだ。

 これが大人の階段かぁ……楽しみだ。

 この先にいったい、なにがあるんだ。


 藍と都に身を委ね、俺はだんだん気持ち良くなってきた。


 おぉ、こりゃ天国だ。


「藍……最高だよ」

「でしょ、耳かき・・・


「ああ、耳かき……って、アレ!?」



 よく見れば俺は耳かきされていた。都は普通に俺の体を解すようなマッサージを繰り返す。


 マジで普通!!


 下着はえっちだけど!!


 それだけ!!



「え、赤くん、気持ちいでしょ?」

「そ、そりゃ……ね」



 藍にひざまくらされ、耳かきとか天国でしかない。それに都のマッサージも気持ち良すぎる。そういえば子供の頃から上手いんだよな。



「どうですか、兄さん」

「気持ちいよ。最高のマッサージだ」

「でしょ~。私、いつか整体師になろうかと」

「そうなんだな。どうりで上手いと思った」


 いや、これはこれで最高なんだが、思ってたのと違う!!


 まあいい、望みはあと一回叶うのだから。

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