第26話 殺人鬼とヤンデレとガチホモ

 次々に現れる犯罪者共。

 どうしてこんな場所に現れたんだ……?



「茂木、中田……木ノ原を殺したのか!」



 近くで血を流し倒れている木ノ原。他にも倒れているが、そっちは気絶している程度らしい。

 都と平野はさておき、殺人事件が起きた。


 茂木が包丁をチラつかせながら俺の前に立った。



「邪魔だったからな、ぶっ殺してやった」

「この人殺し!」

「そもそも、この馬鹿共を集めたのはこの俺。ずっとお前の家の前で張り付いていれば、お前の幼馴染がこんな場所に連れ出してくれた。チャンスだったわけさ」


「都も共犯なのか!?」


「いや、あの女は関係ない。だが少なくとも尾行すればお前に辿り着くと思っていたさ」


 そうか。茂木と中田は、偶然会った平野と木ノ原を焚きつけて……そして、機会をうかがって俺たちを奇襲したわけか。

 少なくとも都は関係ないが、ずっとつけられていたんだな。


「お前ら、こんなことをして今度こそ出てこれないぞ!」

「ハハッ。そうかもな、今頃警察は俺たちを探しているはず。だがな、こんな場所では直ぐに見つからねぇよ。紫藤、この前の続きだ……! 今度こそ藍を奪ってやる」


 悪魔のように笑う茂木は、藍の方へ向かっていく。

 させるかよ!!


 俺は茂木にタックルして止めた。



「やめろッ!!」



 けど、中田が俺を蹴飛ばしてきてた。

 そのまま倒れ、俺は踏みつけられた。くそっ……!



「あぶねぇ。茂木さん、紫藤は俺が掘るからそっちは楽しんでくれ」

「助かったぜ、中田。……あぁ、ぞんぶんに楽しめ。紫藤のケツをな!!」



 くそ、くそおおおおおおおおおおお!!


 中田が俺を押さえつけながら体に触れてくる。気持ち悪ィ……!



「ど、どこを触ってやがる……やめろ!!」

「紫藤、お前の身も心も俺のモンだ」



 ホモの中田が俺のズボンを脱がしてきた。ちくしょう……俺はこんなところで掘られてしまうのか!!


 包丁で脅されてこれ以上の抵抗ができない。


 せめて、藍だけでも逃がさないと!



「藍!! 逃げるんだ!! 早く!!」



 必死に叫ぶが中田が俺の口を塞ぐ。



「黙れ、紫藤。いいからケツ貸せや!!」



 俺はパンイチにされ、いよいよ掘られる寸前に追いやられた。……終わった。俺はこんなガチホモに犯されてしまうのか。


 嫌だ、嫌だ、嫌だ……!!


 大怪我をしてもいいから、俺は抵抗を試みようとした――が。



「この野郎ォ!!!」



 叫びと共に、中田がブン殴られていた。

 衝撃でゴロゴロと転がって気を失う中田。いったい、誰が……?



「ひ、平野……お前か」


「ハァ……ハァ……。紫藤、お前が目の前で掘られるところなんて見たくないからな。不本意ながら助けてやったよ。……ま、そのまま見守ってやっても良かったが……だが、茂木ィ!! 話が違ぇじゃねえか!!」


 話が違う? どういうことだろうと首をかしげていると、茂木が笑った。



「ハハ! 平野、お前のコネのおかげで俺たちは助かった。おかげで釈放され、この二度目のチャンスを得たのだからな」



 なっ……! 平野が茂木と中田を助けていたのか。それで、こんなアッサリ外へ出られたわけか。



「茂木、人殺しをするなんて聞いてないぞ!! よりによって木ノ原先生を殺害とかさ! こんな殺人事件なんて起こして……俺が共犯にされたら困るんだよ!!」


「うるせぇ。平野、お前もこの場でバラしてやろうか!?」


 包丁で威嚇する茂木。平野は青ざめ――ついに逃げ出した。って、おい!! 俺たちを置いていくな!!



「おい、ウソだろ……」

「あははは! 平野はしょせん捨て駒だ。……さて、紫藤。これで俺たちだけだな。お前はそこで見てろ」


「いや、中田から解放された今ならお前を止められるさ」



 平野のおかげで俺は自由を得た。

 茂木は包丁を持っているが、それだけだ。

 藍を守る為なら俺は――!


 平野の持っていた金属バットを拾い、俺は茂木に向けた。



「なるほど、それで武器を得たつもりか」

「これでお前に勝つ」



 バットの方がリーチはあるからな、これなら茂木を止められる!



「勝つぅ!? てめぇには勝利はねぇ!!」



 包丁を持って向かってくる茂木。もちろん、俺は金属バットを振るい、茂木の包丁と刃を交えた。


 バチンと火花が散って、更に打ちつけていく。


 信じられないほど攻防が続き、互いに凶器を強打した。



「おらああああああ! 茂木!!」



「紫藤! 紫藤ォ! 紫藤おおおおお、ガチの殺し合いは楽しいよなああああああああ!! ぶっ殺す! ぶっ殺す! ぶっ殺す! お前のはらわたをめちゃくちゃにしてやりたい!! 殺す、殺す、殺す! 死ね、死ね、死ねえええええええええ!! 雑魚が! ゴミが! カスが! お前のような陰キャに藍はふさわしくねえええ! 死ね、死ね、死ね!! さっさとくたばれッッ!! 地獄に落ちろォ!!」



 包丁を巧みに操り、俺の金属バット攻撃をもろともしない。なんてヤツだ! コイツ、まるで戦闘慣れしてるみたいに、機敏な動きだ。どうなっててんだよ、これは!



「この殺人鬼!!」

「殺人鬼上等! どのみち、木ノ原を殺っちまったしよ! 今更取り返しがつかないよォ! あははははは!!」



 恐ろしいことに、茂木の包丁さばきで俺の金属バットは弾かれた。



「……そんな馬鹿な」

「詰みだ、紫藤。お前はここで人生終了だ」



 追い込まれた。まさか茂木がここまでやるとは……。

 包丁の穂先が俺の喉元につきつけられた。


 ……だめだ、殺される……!


 諦めかけたその時。



 茂木の顔面に物凄い速度の蹴りが入り、地面に叩き落とした。




「がはああああああああああああああああ!?!?」




 な、なんだ……!?


 って、まさか……都!



「……っぶなかった。ごめんなさい、兄さん」

「都……お前がやったのか」

「これでも私は空手を習っているので。……それにしても、こんなことになるなんて」



 これで茂木はもう立ち上がれ――。



「紫藤おおおおおおおおおおおお!!!」


「ま、まだ意識があるのかよ!!」



 茂木が再び俺に襲い掛かってくる。

 金属バットを拾い、俺は最後の力をこめて振りかぶった。茂木の頭上に一撃を入れ、ぶっ倒した。




「ぐわあああああああああああああああああ……!!!」




 これでやっと終わった……。

 茂木は白目をむいて倒れていた。

 藍の様子を見に行こうとすると、突然中田が立ちが合った。


「……」

「な、中田」


 だが、中田は白目をむいて意識が朦朧もうろうとしていた。

 なぜか茂木の方へ向かい、彼のズボンを脱がしていた。


「……紫藤、お前を……つかまえた……ぞ」


 ま、まさか中田のヤツ、茂木を俺と勘違いしている……?

 恐ろしいことに、中田はそのまま茂木をガンガン掘っていた。こ、これは……なんてこった。地獄だ。

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