第25話 叶わぬ恋
届いたメッセージに俺は青ざめた。
なんだよ、こりゃ……。
さすがに身の危険を感じるぞ。
「どうしたの、赤くん」
「あー、いや……なんでもない。それより、飯を頼もう」
都の件は後にしておこう。
今は藍とゆっくりする方が最優先なのだから――。
◆
「――ふぅ、美味かった」
イタリアンハンバーグはいつ食っても美味しい。これで500円なのだから安い。安すぎる……!
満腹になったところでファミレスを後にした。ここから先のプランはなにも考えていない。忘れていた都のことを思い出すが、後回しに。
あんなのどう返信していいか俺には分からなかった。
なんて答えればいいんだ……?
無言のまま歩き、気づけば人通りの少ない道を歩いていた。
「ねえ、赤くん。これからどうしよっか」
「そ、そうだな……う~ん」
悩んでいると背後から気配を感じた。
……まて。やっぱり誰か――。
振り向こうとすると、首筋に電気を感じて俺は意識を失った。……なっ。ス、スタンガン……?
『…………油断しましたね、兄さん』
こ、この声は……都!
ずっと尾行していたのか…………うっ。
意識が遠のき、俺は倒れた。
「……」
どれくらい意識を失っていただろう。
目を開けると、あのファミレスから近い公園にいた。運ばれてきたのか……?
「おはようございます、兄さん」
「都! お前がやったのか!」
「ええ、そうですよ。重くて大変でした。でも、これでやっとゆっくり話せますね」
「おい、都。藍はどうした!」
「藍ちゃんには眠ってもらっています。ほら、そこに」
都の指さす方向には草むらで倒れている藍の姿があった。手足を縛られてる……! なんだこれは!
「冗談はよせ、都!」
「冗談? 冗談なんかじゃないです。私はいつだって本気ですよ」
よく見れば俺自身も手足を縛られていた。逃げられない……。
「なにをするつもりだ」
「言ったでしょう。逆に寝取るって。どうせ、兄さんと藍ちゃんはもう付き合っているんでしょう? そうでなくても、最近二人の距離感はとても近い。そんなのズルい」
包丁を取り出し、俺を脅してくる都。目がヤバイ。
こりゃ下手なことを言えば殺されるか……。
「なにが望みだ」
「私の望みはただひとつ。兄さんとひとつになりたいんです」
そう言って都は、俺の体に跨り体を密着してきた。……俺は思わず下半身が反応してしまう。……くそ、都は妹して見ていたはずなのに。
でも、こうされると……さすがの俺も耐えきれない。
「……っ」
「やっぱり兄さん、体は正直ですね」
「やめろ、都。俺は……お前が好きだけど、でもそういう好きじゃない。幼馴染として好きなんだ」
「嫌です……。そんなの嫌です」
「なぜ」
「それってつまり、永遠に叶わぬ恋ってことじゃないですか。そんなの嫌。切なくて、苦しくて、毎日涙が出ちゃう。私は兄さんが本気で好き。大好き。なのに、兄さんは妹としてしか見てくれない……。なら、藍ちゃんから寝取るしかないですよね……!」
都は服を脱ぎ始めた。
公園の林の中だから、こんなところでは誰も来ない。まずい……襲われる!
焦っていると都はもう上半身は裸だった。
…………ッッ!
「都……やめろ」
「さあ、兄さん。手を私の胸に当ててください」
都は俺の手を無理矢理、自分の胸に。
くそう、俺は望んでいないのに……でも、縛られて抵抗できない。悔しい、でも……俺は情けないことに興奮していた。
都がこんなに可愛く思えるなんて……自分でも信じられなかった。
くそう、くそう、くそう。
俺の馬鹿野郎!!
なぜ俺は、体が正直なんだよ。少しは耐えろ!!
「…………都」
「やっとひとつになれますね」
「……くっ」
今度は俺のズボンを脱がせてくる都。……あぁ、終わった。そこまでされると俺はもう身を委ねるしか――。
けれど、そこで事態は急変した。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
発狂するような声と共に、都が吹き飛ばされていた。
突然、黒い影が草むらから現れ、金属バットで都を殴ったんだ。
「だ、誰だ……!!」
「ククク、ククク……フハハハハハハ!!!」
「お、お前は……平野! どうして!!」
「よう、紫藤。お前に復讐しに来た」
「ふざけんな! お前は傷害で逮捕されたんだろうが!」
「バーカ! 少年法で守られるんだよ。それにな、俺の親父が警察関係者なんだ。いいか、警察は身内に甘いんだよ、紫藤ォ!!」
そうか、そうだったのか。
金属バッドを持ち、俺に襲い掛かってくる平野。なんてタイミングで……む!?
「死ねえええええええええええええええええ!!」
また発狂するような声が響く。
平野がぶっ飛ばされ、木々に激突。
背後から……木ノ原!?
「……あぶねーあぶねー。紫藤を殺るのはこの俺だ。紫藤、お前に復讐する為に留置所から抜け出してきてやったぜ」
「なっ……抜け出してきたって! そりゃ逃亡ってことか!」
「ああ……どうせ俺の人生は終わってる。だからな、せめて紫藤。お前をぶち殺してやる!!」
血走った目で俺をにらむ木ノ原。平野の登場にも驚いたが、まさか木ノ原まで現れるとは……。
だが。
「木ノ原、てめえ!! 俺たちの獲物を横取りするんじゃねェ!!」
「紫藤は俺たちがぶっ殺すんだよ!!」
唐突に二人の陰が現れ、木ノ原が包丁で刺殺されていた。ちょ、おい……またかよ!!
「お前ら……。茂木と中田か」
「よう、紫藤。昨日ぶりだな」
「よくも俺様の股間を破壊してくれたな、紫藤ォ!!」
平野に木ノ原と登場して、今度は茂木と中田……どうなっているんだよ、これは!!
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