第24話 ファミレス事件:序
綾乃の顔が俺の下半身に。
ズボンを脱がせようとチャックを下ろそうとしてくる。
ま、まずい……!
ていうか、こんなところで誰かに見られたら大変だぞ!
俺は綾乃から離れた。
その直後だった。
「こんなところにいたの綾乃!!」
綾乃の呼ぶ声がして、誰か俺の家に入ってきた。……って、あれは綾乃の母親じゃないか!!
「か、母さん! どうして!」
「どうしてじゃないでしょ! ずっと探していたのよ! そのうち赤くんの家に現れると思っていたけど、やっぱりね」
母親は、綾乃の腕をつかんだ。
……ホッ、良かった。
保護者登場なら、俺の出る幕はない。
「綾乃のお母さん、後はお願いします。彼女、危ないことしているっぽいので」
「迷惑かけてごめんなさいね、赤くん。娘は連れていくから」
何度も謝る綾乃の母親。
だが、一方で綾乃は抵抗を続けていた。
「は、放してよ!」
「いい加減にしなさい!!」
バチンとビンタされ、綾乃は抵抗する意思を失っていた。おいおい、そこまでしなくても……。と、思ったが今止められるのは母親だけだ。
やがて綾乃は連れていかれた。
……ふぅ、危なかった。
◆
家に戻り、まったりと時間を過ごしていればお昼過ぎ。スマホに連絡が入った。
ん……藍か。
藍:今から行くね。どこか出かけよ
赤:あいよ。待ってる
藍が家に来ることになった。しかも、どこかへ行くつもりらしい。いいね。たまにはどこかへブラブラするのも良いだろう。
今はとにかく気晴らしをしたい。
しばらく待つとチャイムが鳴った。
玄関へ向かい、扉を開けるとそこには可愛らしいロングワンピース姿の藍がいた。
「お待たせ」
「…………お、おう」
「ぼうっとして、どうしたの?」
普段は制服姿しか見ないから私服は新鮮だな。それに、今日はとびっきり可愛い。アイドルにいてもおかしくはないレベルだ。
「いや、なんでもない。それより、どこへ行こうか」
「どこでもいいよ~。赤くんに任せる」
俺が藍を連れ回していいってことか。
まるでデートみたいで緊張するけれど、今までもたまにカラオケへ行ったり、ゲーセンで遊んだりしたものだ。そうだ、いつもと同じようにすればいい。
「まずは……飯かな」
「あたしも食べてないし、そうしよっか」
意外にも藍の方から手を繋いでくれた。
こんな風に引っ張ってくれるとは……思いもしなかった。なんて嬉しい。
まずは近所のファミレスに向かうことに。
『………………』
だが、その時。
背後から視線を感じた。
俺は振り向いた。
けれど、そこに人は誰もいなかった。……ん? おかしいな。まるで“殺意”のようなものを感じたのだが。
気のせいか。
そのまま歩き続け、近所のファミレスへ入った。
席につき――また違和感を感じた。
「!? 見られてる……?」
「どうしたの、赤くん?」
「いや、なんか視線を感じるんだよなあ」
「気にしすぎだよ~」
そうなのかな。
ああ、でもひとつ心当たりがあるといえば。
「そうだ。今朝、綾乃の件だけど」
「ああ、うん。どうなったの?」
「母親が現れてなんとかしてもらった。助かったよ」
「良かった。なにもなかったんだね」
「追い返すつもりだったけど、あまりにしつこくてね。綾乃のヤツ、金の為に俺と……体の関係を持ちかけてきた」
「え……!」
「でも大丈夫だ。断ったし、綾乃はもういない」
「そうなんだ……」
心配そうな表情を浮かべる藍。心配させて申し訳ないと思う。でも、藍の存在が大きかった。彼女がいなければ、今頃俺は綾乃と酷い運命を辿っていたと思う。
「さあ、なにか頼もう」
「うん」
メニューを眺め、俺はなにを食べようか悩む。
そこでスマホが振動した。
ん?
軽く覗いてみると『都』からメッセージが。
ああ……忘れていた。
メッセージを見てみると。
都:兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、兄さん、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き
え……なんじゃこりゃ!?
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